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北京五輪、今だから書ける「顔色が悪かった」高木美帆(27歳)…オランダ人コーチの“復帰”で笑顔に「ヨハンの存在の大きさを感じた」
posted2022/02/25 17:04
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
北京五輪を取材して、スピードスケートの高木美帆(日本体育大学職員)は根っからのソルジャーなのだと深く感じ入った。一大会で金1、銀3、合計4個のメダルを獲得するという偉業を達成した後、こんなふうに五輪を表現した。
「オリンピックとは“本気”を味わえる場所だと強く感じている。それを周りの人たちと共有できるのもオリンピックならではだと思う。本気の舞台で本気で戦うことができるのは幸せ。しんどい期間もあったが楽しかった」
平昌五輪では4種目6レースに出て金銀銅メダルを“コンプリート”した。より高いハードルとなった北京五輪では5種目7レースを「滑りきることができた」と、前回を上回る“コンプリート”に胸を張った。
今だから書ける「顔色が悪かった」
そんな高木が意外な弱点を見せたことがあった。5種目の最初のレースとして登場した2月5日の女子3000mだ。高木はメダルを狙えると目されていた種目で表彰台を逃し、しかも平昌五輪の5位より順位を下げる6位という結果に終わった。今だから書けるが、目の下にクマができていた。顔色も悪かった。いつもなら歯切れの良いコメントでレースを総括する彼女なのに、ひとつの言葉を出すのにも相当な時間がかかっていた。
「気持ちの部分で、ひるんだと感じていたところはないけれど、どこかにそういうものがひそんでいたのか。今はちょっと分からない。全体的に“こうでした”と表現するのが難しいというのが現状です」
絞り出すように言った。
デビットコーチが“いなかった”
ナショナルチームのヨハン・デビットHC(ヘッドコーチ、オランダ出身)が自身のツイッターで新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と判定されたことを公表したのは、2月3日だった。隔離用のホテルに移ったことも明かされていた。いつも選手の近くに寄り添い、レース前はシンプルで的確な助言を授け、レース後は即座に適切なレビューをする。だが、北京五輪の序盤戦はそれがない状態だった。