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高木美帆「顔が死んでいたけど大丈夫?と連絡が…」“考え抜いた北京五輪”知られざる舞台裏を告白「最後に、もうこれ以上はできないと」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKosuke Mae
posted2022/05/22 06:00
北京五輪で4つのメダルを獲得した高木。1000mでは自身初となる個人競技での金に輝いた
「それぞれの種目の面白さは、それぞれをどう攻略するかにあります。どうやったら強い選手に勝てるのかを考えるのが楽しいし、勝ちたい。5000mとマススタートにも出て全7種目を完全制覇するという考えもあると思いますが、私はそれには興味がありません。出るからには攻略したい、勝ちたいと思えるのがこの5種目なんです」
平昌五輪で獲得したメダル3個に加え、今回は4個のメダルを獲得した。通算で金2、銀4、銅1の計7個。五輪競技のアスリートにとっては垂涎の成績だ。けれども、高木にはどこか距離を置いてメダルを見ているような節がある。
「メダル4個は運があったなと思っていて、頑張った甲斐があった、というような実感はあまりないですね」
メダルを獲ったのは既に過去の自分。そんな思いがあるのだ。
金メダルへの挑戦は「本当に面白いよとは言える」
「スケートを滑ることを前向きに思っている自分がいた」と語り、現役続行を明らかにしたが、今後の詳細についてはしばらく時間をかけて考えるつもりだ。
「スケートに対して、これからどうやって行きたいのかを考えていってもいいのかな。4年前の平昌五輪後は、出し切って疲れたと思っていても、考える余地なしに次に進まなければいけなくなっていました。すぐに次のシーズンに向けての合宿が始まり、モチベーションが上がらなくて、その時期が個人的に一番しんどかったですから」
金メダルの喜びも世界記録を樹立する楽しさも十分に味わっている高木だけに、「勝負を楽しむには相当な積み上げが必要となる。あの楽しさを簡単には味わえないというのを理解しているので、この先へ行くのが怖くもあるし、本当に行くの? と思っている自分もいます」とも言う。