加藤哲一人で負けたわけではない。どんな敗北も、原因がたった1つに集約されるほど物事は単純ではない。だが、世間は“『巨人はロッテより弱い』という発言で怒りを買った”という安易な構図に乗って叩いた。“世紀の大バッシング”を喰らったはずなのに、加藤哲は実に平然としている。

「面と向かって何か言われたことって1回もないんですよ。たぶん、本人に会ったらまあまあ怖いから（笑）。今でも日本シリーズの時期になると必ずあの話題が出て、ツイッターのフォロワーが一気に増えるんですよ」

現在の加藤哲郎氏　©Number Web

昨今の“ヒーローインタビュー”に何を思う？

　あの舌禍騒動以来、プロ野球選手のヒーローインタビューは「強力打線なので気を付けました」「野手がよく守ってくれました」など当たり障りのないコメントばかりになった。

「本心だと思いますよ。そういう人が増えたんでしょうね。今は、相手を敵対視しない。『やったろか！』みたいな選手はあまりいないんじゃないですか。スポーツマンシップに則っている感じですよ。僕は『スポーツマンシップ？　あるか、そんなもん』と言ってましたから」

　時代は変わった。現在は他球団の選手とWBCや五輪などでチームメイトになり、一緒に自主トレもしている。

「僕は近鉄以外の野手とは絶対にしゃべらなかった。仲良くなったら、厳しいところに投げられなくなるから。あの頃、パ・リーグのピッチャーは『当ててもいい』くらいの勢いで内角に投げてました。今、イチローが現役なら4割打ってますよ。逆に言えば、野手はどんどん相手ピッチャーと懇意になればいいと思いますね」

　現役時代も引退後も、加藤哲郎は思ったことしか言えない。その性格が解説者として小気味いいとの評判を得た一方で、“第2の舌禍騒動”を引き起こす原因にもなる――。（後編へつづく）

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