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柔道があまり好きではなかった13歳の少年を変えた“偉大な父の死”…斉藤立(20)史上初の親子日本一「パリでは父と同じ場所に立ちたい」
posted2022/04/30 11:04
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
AFLO SPORT
亡き父が躍動した聖地・日本武道館。勝負が決まった瞬間、斉藤立(たつる/20歳・国士舘大)は右手でガッツポーズを見せた。
全日本選抜体重別選手権での悔しい両者判定負けから約4週間。斉藤は体重無差別で日本一を争う全日本選手権で石井慧、山下泰裕に次ぐ、史上3位の年少優勝とともに、史上初の親子二代での同大会優勝を成し遂げた。
準決勝では東京オリンピック100kg超級代表の原沢久喜を破り、決勝は4週間前にも勝利した2021年世界選手権覇者、影浦心との14分超の激闘を制した。
「すごくうれしい」。素直に喜びを噛みしめながらも、先を見据えるからこそ、「自分は強いと思っていない」「日本一とは自分で思っていない」と言葉は控えめ。あくまでも冷静だ。
表彰式では、父が現役時代にしのぎを削った最大のライバル、全日本柔道連盟会長の山下泰裕氏から賜杯を授与された。
天国の父もこの一戦をきっと見守っていたに違いない。自分と同じ場所に立った息子にどんな言葉をかけたのだろうか。
「よくやったな」、それとも「まだまだだな」なのか。
「握手してから、課題を言われると思う。自分の前では厳しいので。褒められることはないと思う。まだオリンピックも勝てていないので、(父親には)まだまだ並べていない」と、偉大な父への思いを口にしていた。
「脂っこいものは好きじゃないし、お菓子も食べない」
身長190cm、体重165kg、父・仁さん譲りの恵まれた体格。
「でかいねってよくみんなに言われます」
巨体を揺らしながら彼はそう笑ったが、実は「脂っこいものはあまり好きじゃないし、お菓子もほとんど口にしない」のだという。好きな食べ物は「お寿司」。数十皿食べたなど逸話も聞こえてくるが、4月上旬のインタビューでも、前日にそのパワーフードをお腹いっぱいになるまで堪能し、英気を養ったと笑顔を見せていた。