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ラストマッチで“キャリア最高のKO勝利”…レジェンド高阪剛(52)が語った“日本MMA界”への提言「今は戦績がすごく大事。ただ…」
posted2022/05/04 11:02
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
RIZIN FF
総合格闘技史上、前代未聞かつ最高の引退試合と言ってもいいだろう。4月17日の『RIZIN.35』(東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ・メインアリーナ)で“世界のTK”こと高阪剛のラストマッチが行われ、極真空手の世界王者である上田幹雄に1ラウンド2分5秒、TKO勝ちを収めた。
26歳vs52歳の異色対決
高阪剛は1994年に前田日明が主宰するリングスでプロデビュー。1998年からはアメリカに拠点を移しMMA(総合格闘技)の世界最高峰UFCにレギュラー参戦。世界のヘビー級の強豪と闘い、長年にわたり格闘技界を牽引してきたレジェンドだ。
対する上田幹雄は、2019年に開催された極真会館の「第12回オープントーナメント全世界空手道選手権大会」で、日本人として16年ぶりに優勝をはたした極真世界王者。名伯楽・宮田和幸の指導を受け、今回MMAデビュー戦を迎えた。
試合の時点で高阪が52歳、上田はそのちょうど半分の年齢の26歳。州のアスレチックコミッションが管轄するアメリカでは、おそらく年齢差がありすぎて危険と見なされ組めないカード。そんなJ-MMAならではの異色対決は、「スタンドでは上田が圧倒的に有利。寝技に持ち込むことができたら高阪にも勝機あり」というのが一般的な下馬評だったが、結果は高阪が極真王者を右フックでなぎ倒してからのパウンドでTKO勝ち。最高の形で足掛け28年の現役生活に幕を引いた。
激闘の翌日、高阪は足を引きずっていた
そんな激闘の翌日、高阪の茨城県の自宅で独占インタビューを行わせてもらった。最寄りの駅まで迎えにきてくれた昨夜のヒーローは、車を降りると足を引きずっていた。聞けば上田の強烈なローキックを受けたため、左脚の曲げ伸ばしができないのだという。
「ローキックでここまで効かされたのは久しぶりですね。しかも何発か受けたわけでなく、たった一発でこうなってしまいましたから。試合中はアドレナリンが出てたんで動けましたけど、試合後はいきなり力が入らなくなりました」
前夜の試合で高阪は、開始早々前蹴りに吹っ飛ばされ、ハイキックはガードの上からでも効かされるなど、上田の格闘家としてのポテンシャルの高さを文字通り体で感じたという。
「すごかったですね。触ってみた感触だけですごいポテンシャルを感じたし、身のこなしに関しても極真やフルコンタクト空手出身の選手って直線的に動く印象があったんですけど、サイドへの動きがちゃんとできていた。状況判断で体が反応して動いているのも感じたので、『いい選手がMMAに来てくれたな~』って、自分はどこかで喜びながら試合をしていた気がします」