熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「この町はとても居心地が良い」中島翔哉の才能を信じた元浦和ポンテとの秘話〈ポルティモネンセで中村航輔とともに話を聞いた〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byPortimonense SC
posted2022/05/19 11:03
ポルティモネンセに復帰した中島翔哉
――ディアスらを差し置いて先発する時期もあったものの、故障で試合出場が減りました。さらに2020年3月に新型コロナウイルスの感染が拡大してリーグが中断。その後、チーム練習が再開されたものの、そこに参加せず、チーム内で苦しい立場となりました。このときのいきさつは?
「言い訳にもなるので、細かい事情は話さずにおきます」
――当時、ポルトガルのメディアは「新型コロナウイルスへの感染を恐れ、中島の家で働いていた日本人のお手伝いさんらが日本へ帰国してしまった」など、当時の代理人の言葉として背景を報じました。今でも、当時の決断に悔いはないですか?
「自分なりによく考えて決断したことなので、後悔は全くないです」
――2019年11月を最後に、日本代表から遠ざかっています。それでも今季はクラブで好調で、日本のメディアやファンからは日本代表復帰を望む声もありました。しかし、W杯アジア最終予選には招集されなかった。アジア最終予選の日本代表の試合は、テレビで見ていましたか?
「時差があるので生では見ていませんが、ハイライト映像などは見ています」
――今季の残り試合はわずかですが、プレー内容によっては日本代表へ復帰してW杯に出場の可能性もありそうです。自分ではどう考えていますか?
「もちろん、日本代表に復帰してW杯に出たい気持ちはあります。でも、当面、自分としてはここ(ポルティモネンセ)で最高のプレーをしてチームの勝利に貢献することを考えています」
――ポルトからポルティモネンセへの期限付き移籍は、6月末で満了します。その後、どこでプレーすることになりそうですか?
「現時点では、全く白紙。シーズンが終わってから、ポルトの関係者らと話し合うことになると思います」
穏やかに、なおかつ淡々と語ったが、自分のプレーに対する強い自負、そして日本代表復帰への熱い思いを胸の中に秘めていると感じた。
中村航輔「欧州のGKのレベルは非常に高い」
中村航輔は、的確なポジショニングと鋭い反射神経が持ち味のGKだ。
柏レイソルのアカデミー出身。2013年、18歳でトップチームへ昇格したが、故障もあって出場機会が得られなかった。2015年、アビスパ福岡へ期限付き移籍し、常時出場して経験を積んだ。2016年に柏へ復帰すると、今度はレギュラーとなり、翌年には日本代表にも招集された。
2018年W杯にも招集されたが、出場機会はなし。その後、度重なる故障もあって柏での出場機会が少なくなり、昨年1月、ポルティモネンセへ移籍した。
以来、ポジションをブラジル人、イラン人らと争っている。昨季はリーグ戦7試合にベンチ入りしたが、出場機会はなし。今季は、昨年11月のカップ戦に初出場した後、今年1月のリーグ戦にも出場したが、以後はベンチ入りはしても出場が叶わない状況にある。
――なかなか試合に出られない時期が続いています。
「欧州のGKのレベルは非常に高いです。プロである以上、激しい競争があるのは当然。自分が向上することを一番に考えて練習に励んでいます」
――今後の目標は?
「自分をさらに高めて出場機会を増やし、チームの勝利に貢献したいですね」
ポルティモネンセはポルトガル1部の中位から下位に位置するクラブだが、レギュラー争いのレベルは相当に高い。その中で、故障から回復中の川崎を含む3人の日本人選手は、日々、地道な努力を積み重ねながら、それぞれの夢を追い続けている。