喧騒のロサンゼルスで畑岡は今年の期間中、他のトッププレーヤーの多くと同様に個人宅を借りて過ごした。渋滞も気にならないコースの近くで。「コース（の難しさ）以外でストレスがない」。ゲームに集中するためには、スイングへの自信やポアナ芝への対応といった技術面以外の要素も関係する。

　畑岡は“完璧主義者”として名高い。10代の頃から異国の地でストイックに体を鍛え上げ、ストロークを追求する。尊敬を集めるその姿勢は、ピンと張られた糸のような緊張感すら漂わせる。

　だが、米国で年月を過ごしてきて、日常がスタンプを押したように同じかと言うとそうでもない。

米ツアー6勝目を挙げ、祝福される畑岡奈紗　©︎ZUMA Press/AFLO

　前週のハワイ、ロッテ選手権の直前に彼女は母たちとプライベートな時間を楽しんだ。ワイキキビーチに始まり、ダイヤモンドヘッド、ノースショアまで足を延ばした。ガーリックシュリンプ、かき氷……。そんな“ベタなハワイ観光”は実は人生で初めてだった。もう何年も続けて、試合に出てきたのに。

「みんなが『ハワイは最高』なんて言うのがわからなかったんです。風は強いし、コースは難しいし……何が良いんだろうと思っていた。でも、ちょっとわかった気がしました（笑）」

　ゴルフの伸びしろも、アメリカで知れることもまだたくさんある。すっかり世界のトップランカーに定着してもまだ、将来が楽しみな23歳なのである。