猛牛のささやきBACK NUMBER
20歳佐々木朗希のパーフェクトを止めるのは誰か? リベンジ誓うオリックス戦士3人の証言「去年とは別人」「大谷君もすごかったですけど…」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySankei Shimbun
posted2022/04/23 11:02
ロッテ佐々木朗希に3三振を喫したオリックス吉田正尚。潔く賞賛の言葉を並べたが、「もう切り替えている」と次戦への意気込みを力強く語った
後藤は捕手の松川にも衝撃を受けていた。後藤自身も11年前、ドラフト1位で入団し、高卒ルーキーで開幕スタメンを経験しているからこそ、松川の凄みが誰よりわかる。
「バッターの反応をしっかり見られていることがすごい。高卒1年目の子は何やってもすごいって言われるんですけど、それにしてもすごい。もう雰囲気が高卒じゃないですもんね。打席に入る時に僕は『よろしくー』みたいな感じで挨拶するんですけど、そういう時の反応とか『え? もう10年ぐらいやってんのかな』みたいな雰囲気が出ている。どっしりしていますよね。ちゃんと自分を持っていないと、一軍でここまでは絶対できない。
自分も高卒1年目に、一軍で何試合かやらせてもらったからこそ、すごさがわかります。僕なんかもうウワーッとなって、全然メンタルも技術もついていけてなくて、正直戦える状態じゃなかった。だからマジですごいですよ。カッコいい。リスペクトします。
そういう子の今までの生き方やどんなふうに育てられたのかを、僕も自分に子供ができてからは、聞いてみたいと思うようになったんですよ。子供を野球選手にしたいとかじゃなく、どんなふうに育てたらあんな人になるんだろうって、親として聞いてみたいですね」
俊足の福田、セーフティバントは考えなかった?
5番・センターで出場した福田周平も、まっすぐ前を見据えてあの日を語る。
「もうすごい球だったんで、間違いなく佐々木君の一番いい状態だったんじゃないかなって、僕は勝手に思ってるんですよね。この野球界の中でも本当にトップの球を見れたんじゃないかと考えると、すごくいい経験だなと思います。一番速いまっすぐをまずは弾き返す、と考えていたんですけど、フォークもいいんで、もう追い込まれたら、どうすればいいんやろ?みたいなところはありました(苦笑)。去年とは、球の威力や変化球のキレが全然違う。別人でしたね。
もちろん悔しさはあります。ただそれよりも、ちゃんと、完全試合をするピッチングだったと僕は感じたんで、素直に讃えたいという気持ちになりました」
福田は俊足で小技も得意とする、相手からすれば嫌らしいバッターだ。あの日、例えばセーフティバントを試みるというようなことは考えなかったのだろうか。
「もちろん頭の中ではそういう作戦もありました。でもあの時のロッテの守備は、そういうことも警戒していました。たぶん相手も、普通に打ってくるんじゃなくて、セーフティもあると考えていたと思う。だって三振19個ですからね。前に飛んでないんですから、『そらやってくるでしょ』って考えますよね。パーッと僕が見回したら、ファーストもサードももう目の前にいましたから、厳しいなと思いながら打席に立っていました」
完全試合は、バッテリーだけでなく、野手陣のこうしたサポートもあって成し遂げられたのだ。