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「記録や順位は追わない」吉居大和、近藤幸太郎、山本修平…箱根駅伝のスター選手を輩出する“愛知のご当地クラブ”「TTランナーズ」とは? 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byKana Ikeda

posted2022/04/07 17:00

「記録や順位は追わない」吉居大和、近藤幸太郎、山本修平…箱根駅伝のスター選手を輩出する“愛知のご当地クラブ”「TTランナーズ」とは?<Number Web> photograph by Kana Ikeda

箱根駅伝で活躍するスター選手を続々と輩出しているクラブ「TTランナーズ」は愛知にある

「子どもたちを叱ることはないけど、守りのレースをしたときは、『最初からぶっ飛ばせ!』と言いますね。その経験が将来につながっていくわけですから。世界で勝負していくことを考えると、とにかくスピードをつけないといけません。好記録を出させるんじゃなくて、スピードを磨いて、気持ちの限界を取り払う。前向きな気持ちの子を育てるのが一番大事じゃないでしょうか」

OB吉居駿恭「2分34秒だったかな。半端なく強かった」

 この春、学生長距離界にTTランナーズを卒業した期待のエース候補が登場する。吉居大和の弟・駿恭(中大)だ。

 同クラブの練習会には駒大で活躍した高林祐介も月に2回ほど参加するという。田原工場が近いこともあり、トヨタ自動車で現役を終えたランナーたちもときおりやってくるのだ。仲井さんは吉居駿恭と高林のエピソードを教えてくれた。

「駿恭が中学を卒業する直前のことです。サーキットをやった後の1000mで高林が駿恭を負かそうと本気で臨みました。1周目を60秒切るくらいのハイペースで入ったんだけど、残り200mで置いていかれた。駿恭は2分34秒だったかな。半端なく強かった。高校3年生だった武川も2分42秒ぐらいで走ったと思いますし、他の中学生も2分45秒ぐらいで行っちゃったわけですよ。中学生だけの練習では絶対に無理でしょうけど、社会人がいるとこんな凄い練習ができちゃうときがあるんです」

 吉居駿恭は中学時代から強く、3年時には全中1500mで優勝、3000mでも2位に入っている。仙台育英高でも活躍して、昨季は10000mで高校歴代3位の28分11秒96をマーク。全国高校駅伝1区でも区間3位と好走した。今春入学した大学ではどんな活躍を見せるのか。

「とにかく目標に向かって、自分で考えて行動してほしいよね。最終的には、それが競技を終えた後の人生に役立つことになるんだから」

決してエリート養成クラブではない

 令和を生きる子どもたちにも大正2年に生まれた中村清の教えが脈々と受け継がれているようだ。突出した選手の例を挙げたが、TTランナーズは決してエリート養成クラブではない。走ることが好きな子、子どもの付き添いで来て自分も走りたくなったお父さん、自らの目標を果たしたい社会人、さまざまなランナーによって醸成され、自ら考える場所となっている。このようなクラブが増えると、日本のスポーツ界はもっと豊かになるだろう。

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