格闘技PRESSBACK NUMBER
新日NJC覇者ザック・セイバーJr.の試合はなぜ面白い?「ヴィーガンでリベラルで、反ボリス・ジョンソン」な異色キャラと“14歳の決意”
posted2022/04/03 17:03
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
IWGP世界ヘビー級のベルトを保持するオカダ・カズチカも含め、史上最大の48名が参加した今年の『NEW JAPAN CUP』を制したのはザック・セイバーJr.だった。
「ああいう強い相手がいるのは……なんかさ、ワクワクしちゃうよ。ああいう強い相手がいるからこそ、俺ももっと頑張ろうって思える」
決勝で敗れた内藤哲也は、こうコメントを残した。
そう、今のザックがどういう選手なのかを表す言葉は、シンプルに「強い」だ。
観客に「寝技の面白さ」を知らしめたザック
ザックがこのトーナメントを制するのは2度目だ。2017年から新日本プロレスに参戦した彼がNJC初出場を果たしたのは2018年のことだった。ブリティッシュ・ヘビー級チャンピオンは、内藤、飯伏幸太、SANADA、棚橋弘至を破り初出場初優勝。ダークホースながら春男になってみせた。
当時の決勝戦を決着させたのは、オリエンテーリング・ウィズ・ナパーム・デス(変型ニーロック、レッグスプレッド、マフラーホールドの複合関節技)。2017年の『G1 CLIMAX』に参戦した時にはエル・デスペラードが鈴木軍のタオルを持ってセコンドについていたが、この時にはTAKAみちのくの前口上がつくようになった。
「勝つのは、いつなんどきどんな体勢でも関節技・サブミッションホールドを極められるこの男、無限のサブミッションホールドを持つこの男、He is サブミッションマスター、He is ZSJ、He is ザック・セイバーJr.! ザックの前に立つヤツは皆、JUST! TAP! OUT! ギブアップあるのみ」
その言葉通りに全試合関節技で勝利してみせた“英国の若き匠”は、それまで一定数いた、「巧い選手なのはなんとなくわかる。けど、寝技の面白さがよくわからない」という観客にも強烈な印象を与えた。キャッチレスリングやブラジリアン柔術などの様々な技術をもとに繰り広げられる唯一無二のテクニカルレスリングは、いつどうやって試合が終わってしまうのかわからないことは面白い、人間が見事に折り畳まれていく様子は面白い……という新しい価値観をもたらした。