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新日NJC覇者ザック・セイバーJr.の試合はなぜ面白い?「ヴィーガンでリベラルで、反ボリス・ジョンソン」な異色キャラと“14歳の決意” 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/04/03 17:03

新日NJC覇者ザック・セイバーJr.の試合はなぜ面白い?「ヴィーガンでリベラルで、反ボリス・ジョンソン」な異色キャラと“14歳の決意”<Number Web> photograph by Masashi Hara

『NEW JAPAN CUP』で2度目の優勝を果たし、IWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカへの挑戦権を手にしたザック・セイバーJr.

「ボリス・ジョンソンが首相になるのが心配で…」

 しかし、春の王者としてオカダ・カズチカに挑戦したIWGPヘビー級選手権では敗れた。

 あれから4年、様々なことがあった。

 SANADAとの高度な技術の応酬は、何度戦っていたとしても、そしてそれらを何年後に改めて見たとしても、決して色褪せない名試合を生んだ。関節技と丸め込みに加え、ザック・ドライバー(みちのくドライバーⅡ)という強力な武器も解禁した。

 TAKAの前口上はなくなり、そのかわりに「次期英国首相がボリス・ジョンソンになったら……と思うと試合に集中できなかった」「肉を食べなくても生きていけるというヴィーガンのメッセージを発信したい」「この優勝を今世紀最高のポップスターの一人であるジョージ・マイケルに捧げたい」など、自身の言葉が注目を集めるようになった。新日本プロレス初のイギリス大会も開催された。シングルだけでなく、タッグでもタイチとのデンジャラス・テッカーズで中心に躍り出た。柴田勝頼とのエキシビジョンマッチも実現した。

 それでも、最高王座には手が届かなかった。

 2018年7月1日には、マンチェスターでのスペシャルシングルマッチでオカダからフォール勝ち(ヨーロピアンクラッチ)をしたが、新日本の至宝への再挑戦はなかなか叶わなかった。

 ようやくやってきた2度目の機会は昨年の11月だった。自身が挑戦しない間に“世界”ヘビー級となったベルトを奪うべく鷹木信悟に挑んだその試合には敗れてしまったザックだが、今回は再挑戦まで3年以上も空くことはなかった。「4カ月のスパンでタイトルマッチに挑める、というのが今の自分の力を証明していると思うよ」と自信を見せるザックは、4月9日、NJC優勝後の両国で対オカダ、という4年前と同じシチュエーションで3度目の正直を狙う。

 NJCを初制覇した2018年、世界を飛び回る30歳のレスラーだった彼は「14歳の頃から、自分がどんなレスラーになりたいか、という明確な目標を持ってここまでやってきたから成功してるんだ。いつだって自分自身と向き合って成長してきた」と語った。また、オカダに挑むことについては「この試合ひとつで俺のキャリアは変わらない。たとえ負けても、また戦うだけだ」としていた。なぜ変わらないのか。それは、14歳の頃から一貫して目指しているのが「世界で最高のレスラー」になることだからだ。

【次ページ】 ザックにとってIWGPのベルトこそ「世界最高」の象徴

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