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《阪神ドラ1》プロ入り前の今、森木大智は何を思う? 「落ちるところまで落ちたから、もういいわと」「阪神に自分は向いている」
posted2021/11/15 11:04
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Takahiro Kikuchi
薄暗いブルペンはボールが速く見える。そんな特性を差し引いても、森木大智が投げ込むボールには凄みが宿っていた。
照明が灯った高知高校野球部グラウンドの三塁側ブルペン。森木の投球を受ける3年生捕手が、捕球するたびに「いてぇ!」「えぐっ!」としきりに叫ぶ。美しいバックスピンの残像が白い糸のように伸びて、空間に溶けていく。
カーブ、フォークなどの変化球も交えた約30球のブルペン投球を終えた森木は汗を拭い、いかにも晴れやかな笑顔を見せた。
――これが夏だったら……と思ってしまうんじゃないですか?
そう尋ねると、森木は「最近そう思ってばかりいます」と冗談めかして答えた。
森木が明かす“理想の投球フォーム”とは?
今夏の高知大会決勝戦で明徳義塾に敗れた後、森木は投球フォームを微修正している。腕を振る位置を少し高くしたのだ。
「上から叩く感覚が出てきました。夏の大会前も自分の中ではできていると思っていたんですけど、映像で見てみるとアームアングルが自分のイメージよりも低くて。和田さんからも『低いねぇ』と言われたんですけど、結局、夏の大会はいじらずにそのままの位置でいったんです」
森木の言う「和田さん」とは、高知中時代から指導を受けるベースボールコンサルタントの和田照茂のこと。高知高監督の浜口佳久が和田の評判を聞き、外部スタッフとして招き入れたのだ。
中学3年時に軟式球で最速150キロを計測した選手など、前代未聞だった。だが、そのスピードは森木の天性だけで成し遂げられたものではない。浜口、和田ら指導陣の助言に加え、森木自身のあくなき探究心があればこそ。森木は常に理想の投球フォームを追い求めてきた。
「リリースの時に右腕の肩、ヒジ、手首、指先まで一直線になるのが理想です。指まで真っすぐに力を伝えて、真上から叩くイメージです」
だが、このストイックさが仇となり、深い迷路に迷い込んだ時期もある。