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元プロ野球選手は「フォロワー29万人」をどう活かす? “可愛すぎるスラッガー”谷口雄也がファイターズ新球場“PR担当”へ転身した理由
posted2022/03/25 11:06
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
H.N.F.
「可愛すぎるスラッガー」と呼ばれた男が、現在は新球場PRのために奔走している。
「引退試合をやっていただいた時点では、正直言って先のことは考えていなかったんですが、その後、漠然とですが“僕を育て、高めてくれたファイターズの力になりたいな”と思うようになったんです。そこでチーム側にお話をしたところ、現在、所属している事業統轄本部の前沢賢さんから“PRの仕事をやってみないか”と言っていただきました。すぐに心が決まりました」
北海道日本ハムファイターズで外野手として活躍した谷口雄也氏が引退を発表したのは2021年10月25日のことだった。引退試合の開催から、あれよあれよという間に所属先が決まり、年明けからは本格的に現在の業務に就いている。「1カ月くらいの間にお世話になった方たちに挨拶をして、引っ越しをして、バタバタで北海道に来ました」と笑顔で振り返る。
肩書は株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント事業統轄本部(以下FSE)、本部付でアカデミーでの指導と2023年に開業する『HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE(北海道ボールパークFビレッジ)』のPR活動を兼任している。
引退した選手がアカデミーや野球教室で子どもたちの指導に当たるケースは多い。しかし谷口氏のように、組織の顔とも言えるPR担当を兼ねるのは異例の人事だ。どういった経緯でこのセカンドキャリアをスタートすることになったのか。
FSEで事業統轄本部長を務める前沢賢氏は語る。
「ファイターズとしても初めての試み」
「新しいプロ野球OBの形として、谷口君にはこれまでのOBとは違う関わり方をしてもらいたい、そしてこれを機に新しい関わり方を模索してみないかということを、チームを統轄する本部長とも話しまして、企画PR部の業務も兼任する方針になりました。こうして選手OBが2部署を掛け持ちするのは、ファイターズとしては初めての試みです」
どちらの部署でも活躍できるようにと、あえてアカデミーグループ所属ではなく、事業統轄本部付のポジションに据えたという。
「彼だったら新しい試みができるんじゃないかと思った理由は、まずは彼の知名度です。プロ野球選手は人気商売ではありますが、たとえば有名な選手であってもツイッターのフォロワーは6~7万人というのが通常で、谷口君のように29万人のフォロワーを持つ選手は他にいません。それも、言い方は悪いですが、一軍にずっといた選手ではないのにもかかわらず、彼には29万人の支援者がいる。これは彼の持つ個人の魅力だったり、ケイパビリティ(ライバルに勝ちうる優位性)であると高く評価しました」