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星野や落合と何が違う? 周囲が驚いた監督・立浪和義の「経営者のような視点」とは…茶髪とヒゲNGも「時代が違うのはわかっている」
posted2022/03/25 06:02
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Yoshiyuki Hata
日本シリーズの裏で中日ドラゴンズは変革の秋を迎えていた。ナゴヤ球場でのキャンプ最終クール。枯れた色になった芝生の上で選手たちがキャッチボールを始めた。少し離れたところでコーチ陣や裏方スタッフが見守っている。
そこに立浪和義が現れた。就任したばかりの新監督はバットを手にしていた。現役時代と変わらず、それを自らのシルエットの一部にしたまま、選手たちの中へと歩いていった。すると選手やコーチ、スタッフとバラバラに形成されていたいくつかの人群れが混じり合い、境界がなくなった。
「キャンプの最初に茶髪がダメとか、髭がダメとか言ったので選手も構えていたところはあったかもしれませんが、監督の仕事はみんなを従わせることではなく、いかにやる気を出してもらうか。選手の能力を伸ばして、底上げをすることですから」
練習の合間、インタビュー室にやってきた立浪はまずそう言うと、ふっと笑った。身だしなみについてチーム内のルールを打ち出した新監督は、その一点によって日本ハムファイターズの新庄剛志との「新しさ」と「古さ」の比較対象にされていた。自嘲気味の笑みは、場外で続くそうした論争に向けられたもののようだった。
「古い監督」と思われてもいい
「昔と今とでは時代が違うのはわかっています。でも自分たちのころのプロ野球は130試合だったのが、今は143試合もある。体力的にも精神的にも厳しい状況になっているんです。だから最低限の勝負の厳しさ、当たり前のことを当たり前にやる厳しさは必要なんです。
投手なら何年もローテーションを守って、野手なら何年もレギュラーを張ってから髪も髭も自由にすればいい。これは自分の方針です。新庄監督は、新庄監督のやり方で良いと思うんです。10人いたら10人とも考え方は違いますから。新しくて派手な監督と地味で古い監督と思われているのかもしれませんけど、それはそれでいいんです。自分の仕事はチームを強くすることなので、ブレずにやっていきたいなと思います」
そこまで言うと、立浪はまた薄く笑った。デジタル世界の論争にさほど関心はないようだった。それよりも、どうチームをつくり、どう勝つか、そのことで頭の中は満たされているようだった。
ただ、それについても立浪は比較論争から逃れることはできない。星野仙一と落合博満。この球団でそれぞれの時代を築いた指揮官、どちらの色を濃く継いでいるのか。望むと望まざるとにかかわらず、そのフィルターを通して見られることになる。