- #1
- #2
球体とリズムBACK NUMBER
「主力MFがコロナ陽性と負傷」「得点源は結婚式で日本戦後に離脱」 森保ジャパンよりW杯ピンチのオーストラリア…窮余の一策は?
posted2022/03/23 11:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
手負いのサッカールーズがサムライブルーとの大一番を前に、奥の手を捻り出してきた。ウルグアイ出身の34歳のストライカー、ブルーノ・フォルナローリに豪州の市民権を与え、日本戦で代表にデビューさせるようなのだ。
ベテランと記して差し支えない年齢の攻撃手の初招集は、英国圏のメディアを大きく賑わせ、賛否を呼んでいる。「天才的な一手か」(『ザ・ガーディアン』紙)と期待する一方で、「チームがカオスに」(豪『FOXスポーツ』)と表現するメディアもある。おそらく、そのどちらも正しい。
混沌(カオス)に陥っているのは、中盤の編成を見れば、一目瞭然だ。
当初のメンバー発表の時点で、セントラルMFの一番手、アーロン・ムーイをコロナ陽性で欠いていたところに、こちらもレギュラーのジャクソン・アーバインまで同じく疫病に感染して離脱。W杯予選の最終盤に、チームの心臓部に移植手術を施さなくてはならないとは、グラハム・アーノルド監督もかなり頭が痛いはずだ(指揮官自身もコロナに罹っており、本当の意味で頭痛に悩まされたかもしれない)。さらにはセルティック所属のトム・ロギッチも負傷で辞退となった。
不安は中盤の編成だけでなく……
前線にも、不安がつきまとう。
今予選でチーム最多得点を記録するジェイミー・マクラーレンが、メンバーには入りながらも、ホームでの日本戦の後も豪州に残り、「以前から計画していた」結婚式を執り行うために、サウジアラビアとのアウェー戦には加わらないことを決めた。W杯本大会行きが決まるかもしれない一戦より、プライベートを優先したエースの代役として、フォルナローリに白羽の矢が立ったわけだ。
ただしこれは、優れた妙案になる可能性もある。
ウルグアイの名門ナシオナルで鍛えられたフォルナローリは、同国U-17代表でプレーした経験を持ち、サンプドリア(イタリア)やウエルバ(スペイン)、パナシナイコス(ギリシャ)、フィゲイレンセ(ブラジル)などを経て、2015年夏にメルボルン・シティに加入。初年度に25ゴールを記録してリーグ得点王となり、翌2016-17シーズンは国内カップの優勝に貢献した。2019年夏にパース・グローリーに移ってからも、南半球で継続的にネットを揺らしている。