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ぱんちゃん璃奈が13戦全勝で文句なしの「トップファイター」に…それでも“若い女子選手ならでは”の偏見、SNS誹謗中傷との闘いが続く
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/23 11:05
3月12日、KNOCK OUT後楽園ホール大会のメインに出場し、喜多村美紀に判定勝ちを収めたキックボクサーのぱんちゃん璃奈
「国内で3本の指に入るトップファイターになったと言っていい」
「ぱんちゃんにはKNOCK OUT王者としてふさわしいカードを作っていきます。状況が許せば全大会、海外の選手との対戦でもいい。2本のベルトを獲って13戦無敗。国内で3本の指に入るトップファイターになったと言っていいと思います。(昨年出場した)RIZINさんもいい舞台。道をしっかり作っていきたい」
つまり「他団体の○○に対戦表明」、「○○戦実現なるか」といった形で話題になったり、売り出す必要はないということ。以前のぱんちゃんは、実力を証明したいという思いが空回りして“もの欲しげ”に見える時があった。だが、これからはそういう心配はいらなくなるだろう。ぱんちゃん璃奈はぱんちゃん璃奈としてあるだけで価値がある。それだけのものを、無敗の13戦で築いたのだ。
「若い女子選手より俺の方が詳しい」というファンの勘違い
相変わらずアンチはいる。3月16日の深夜、日付が17日に変わったところで、ぱんちゃんは誕生日を迎えたと喜ぶツイートをした。その少し前に、東北と関東を中心に大きな地震があった。彼女は別の場所にいて知らなかったのだが「地震で大変な時に誕生日のお祝いか」といった批判(というより難癖)が来た。そういうことがあったのでツイートを消しましたという報告にも文句を言う者がいた。素直に謝ればいいのに批判があったことを説明するのか、慰められたいんだろう、承認欲求が強すぎると。まったくもって大きなお世話だ。
タチの悪い批判、的外れなアドバイスなどには、ぱんちゃんに限らず多くの女子選手(プロレスラーも)が悩まされている。若い女性をナメてかかるという風潮、世の中の構造も影響しているかもしれない。「俺のほうが(格闘技、プロレスについて)詳しい」という勘違いからくるマンスプレイニングもあるだろう。
悪質な誹謗中傷に対して、ぱんちゃんは開示請求の意思表示をした。全面的に支持する。遅かれ早かれ必要だったことだ。悪質なSNSユーザーへの対応、その範を示すのもジャンルのトップを走る人間らしい行動だろう(そんなことをしなくて済むのが一番なのだが)。
ただ、開示請求をすると告げるツイートにすら「小物感。暇だなあ」という言葉が重ねられてしまう。団体側にはSNS対応への協力も求めたい。先日はサッカー・J1のジュビロ磐田が注意喚起をしたばかりだ。
やること、考えなくてはいけないことが多い現代のファイター、アスリート。しかしその何割かは完全に不要なものだ。顔も名前も出さない、安全圏にいる(つもりの)卑怯な人間に気を遣う必要はない。そこから解放されることで、ぱんちゃんをはじめ多くの選手がさらに魅力を増すはずだ。
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