濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ぱんちゃん璃奈が13戦全勝で文句なしの「トップファイター」に…それでも“若い女子選手ならでは”の偏見、SNS誹謗中傷との闘いが続く
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/23 11:05
3月12日、KNOCK OUT後楽園ホール大会のメインに出場し、喜多村美紀に判定勝ちを収めたキックボクサーのぱんちゃん璃奈
「効くって分かると気持ちいい。興奮しちゃいました(笑)」
思いの強さが、試合で焦りになって出てしまうことがあった。ガムシャラに攻めるが相手の動きが見えていない。だから倒せない。どうして倒れないんだとムキになると、余計にペースは乱れる。
結果的には、今回も判定勝利に留まった。だが2ラウンドに右のパンチでダウンを奪っている。
「(ダウン、KOには)パワーじゃなく当て方。相手の動きを見てカウンターを取る練習をしています」
試合前に語っていた通り、落ち着いて試合を進める姿勢が目立った。だからこそ生まれたダウンだ。試合前日、計量後の会見ではこんな言葉もあった。
「KOするというプレッシャーはないです。隙があれば倒すというだけ。(気持ちの強さを強調する喜多村に)今まで闘ってきた選手も気持ちを売りにしていました。でも気持ちだけじゃなくテクニックやスピード、パワーも含めて強さ。気持ちはあって当たり前だと思っているので」
得意の前蹴りで相手を突き放し、中間距離でパンチ。特に右がよく当たった。KOにならなかった分、攻め込む時間が長かったということもある。以前、ワンパンチKOした時とは違って自分の攻撃が相手に“効いている”という実感が得られたそうだ。
「効くって分かると気持ちいいですね。興奮しちゃいました(笑)」
最終3ラウンド、逆転のために突っ込んでくる喜多村を完璧には制御できず、組んでヒザの攻撃が多くなった。そこで展開が止まってしまったのは反省点。逆に言えば、それ以外の部分では狙い通り成長を見せることができた。
ぱんちゃんが対戦相手を“名指し”しなくなった理由
「(アトム級王座を獲得した)1年半前は弱かった。弱いながらももぎ取ったベルトでした。今回は自信を持って、自分だけが獲れるベルトだと思って試合をしました。
私は自分から突っ込むスタイルで、ずっと“前に行くな”と言われてたんです。ようやくそれができました。相手に攻撃させて、1つ(タイミングを)ズラして打つ練習をしてきました」
一夜明け会見では、反省とともに手応えを語ることもできた。試合直後のコメントではないから落ち着けるということもあるのだろうが、2つ目のベルトでチャンピオンらしさが増したように見える。
試合を重ね、勝ち星を重ねることで自信がつく。自信がつけば落ち着いて試合ができる。それがダウンやKOにつながる。もちろん、もっと強くなりたいという気持ちは薄れていない。そのために最も大事なのは経験だから、たくさん試合がしたいと言う。6月にはKNOCK OUTのビッグマッチが決まったが、その前にも1試合したいそうだ。
だがそこで「やりたい相手」を具体的に語ることはなかった。強い相手と闘いたい、それだけだ。以前はそうではなかった。認められたいという気持ちが先走って、他団体の選手の名前を出して物議を醸したことがある。下交渉なしの“フライング”は話題にはなるが、それが却って実現への足かせになることもある。そういうことも、経験を積んで分かってきた。
闘いたい相手を名指ししなくなったのは自信の表れではないか。会見でそう聞くと、KNOCK OUTの宮田充プロデューサーが説明してくれた。