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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「日本の教育重視を加味して…」元バルサの名手が母国ブラジルで運営 育成クラブ急成長のヒミツ〈“元U-14日本代表”の18歳も所属〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byFC Ska Brasil
posted2022/03/16 06:00
バルサやブラジル代表などで存在感を発揮したエジミウソン。現在取り組んでいることと日本サッカーへの提言を聞いた
日本人の親友を介して考えを伝えたところ……
――スカ・ブラジルを創設した経緯を教えてください。
「2011年に35歳で現役を引退した後、テレビのコメンテーターをしたり、恵まれない家庭の子弟のための財団を立ち上げて妻と共にその仕事をしていた。将来、指導者となることも視野に入れ、ブラジルサッカー連盟の指導者養成コースを受講したが、世界で通用する選手を自分の手で育てたいという気持ちが強くなった。そんな頃、(自身の出身クラブである)キンゼ・デ・ジャウーのアカデミーで一緒にプレーした日本人の親友に日本のコンサルティング会社を紹介され、自分の考えを伝えたところ、共同で育成クラブを立ち上げることになった」
――育成の方針は?
「僕は欧州でも長くプレーしたから、ブラジルなど南米と欧州のフットボールの各々の長所をわきまえている。また、日本では選手の人間教育を重視することを知っている。ブラジルが伝統的に培ってきたテクニック、創造性、ハングリー精神に欧州流の規律正しさと最先端の戦術を加え、さらに日本の教育重視の観点を加味した独自の選手育成メソッドを確立し、それを全カテゴリーの共通の指針としている」
――ブラジル人選手の個人能力の高さは世界中で認められていますが、素行上の問題を起こして道を踏み外す選手も少なからずいます。
「そうなんだ。それが、ブラジルの選手育成の最大の問題点。私は、世界トップレベルで通用し、なおかつ人間としても尊敬される選手を育てたい」
サンパウロ撃破も「我々の目的は選手を育てること」
――クラブは2019年6月に創設されたが、2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染爆発で数カ月以上の活動休止を余儀なくされたと聞きました。
「2020年は全カテゴリーが州選手権に参加したが、昨年はU-15とU-17だけ。U-20は練習試合をこなしたが、U-23は活動しなかった。それでも、U-15はサンパウロとコリンチャンスを、U-17はサンパウロを撃破するなど健闘してくれた」
――それはすごいですね。特に、サンパウロの選手育成は国内トップクラスですから。
「ただ、我々の最大の目的は選手を育てること。勝つことに特にこだわっているわけではない。創設以来、10人以上の選手が国内外の強豪クラブのアカデミーに迎え入れられている」
――今年1月に行なわれたコパ・サンパウロ(注:若手の登竜門で、欧州ビッグクラブのスカウトも注目する。128チームが4チームずつ32組に分かれて一次リーグを戦った)でも奮闘しましたね。