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金鯱賞3連覇、GI2勝の名馬タップダンスシチーを覚えているか? “変わった子”と言われた騎手・佐藤哲三との“名コンビ”誕生秘話
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byAFLO
posted2022/03/12 06:00
2004年の宝塚記念制覇時のタップダンスシチーと佐藤哲三。GI2勝に加え、金鯱賞3連覇という記録を持つ名馬だった
“哲っちゃん”と言われたのは佐藤哲三騎手(当時、引退)。再び佐々木調教師の弁。
「四位君も名騎手ですからね。何か感性で分かるモノがあったのでしょう。哲っちゃんを薦められたから『なら1度乗ってもらおう』という事で続く朝日チャレンジカップ(現チャレンジカップ)で依頼しました」
すると、指名された佐藤哲三騎手は一発回答で期待に応えた。上手にコントロールすると、なんと1分58秒1のレコード勝ち。後のGIホースにとって初めてとなる重賞制覇を飾ってみせたのだ。
「この後はずっと哲っちゃんに乗ってもらうようにしました」
“タップ”を踏んでいた馬がジャパンCを…
するとこの年の暮れ、有馬記念の最後の直線では堂々と先頭に立った。最後には当時の王者シンボリクリスエスに差されてしまったが、2着は確保した。
そして翌年の東京競馬場リニューアル記念快勝を経て、初めての金鯱賞に出走。ここも見事に連勝で制してみせた。
「有馬記念で2着したのにリニューアル記念では人気がなかった(7番人気)。フロック視されたのは少し納得がいかなかったので、勝ってくれてスカッとしました。金鯱賞では2番手追走から早目に先頭に立って、結果、そのまま押し切りました。その強さにGI勝利が近付いていると思ったものです」
実際、最初の半マイルは47秒1というラップを刻み、逃げたダイタクフラッグはブービーの13着に沈んだし、逆に2着まで追い上げたツルマルボーイは最終コーナーでも後方に控えていた馬だった。そんな先行馬に不利な流れを早目先頭から押し切ったタップダンスシチーは、ラップ的にも非常に優秀な走りである事が分かった。そして、佐々木調教師の見解が間違っていなかった事を、タップダンスシチーはすぐに証明した。金鯱賞から僅か半年後、彼はジャパンCで2着馬に9馬身もの差をつけて自身初のGI制覇を成し遂げてみせたのだ。
「タップを踏むような歩様の馬だったのにこのジャパンCは2人曳きの必要がありませんでした。やっと本当に力をつけてくれたと確信したし、これなら勝てると思ったけど、それにしても強い勝ちっぷりでしたね」