金鯱賞3連覇のウラ側

　翌2004年の金鯱賞では同レース連覇を決めたが、決して楽なレースではなかった。

「久しぶりの競馬（前年の有馬記念以来約5カ月ぶり）のせいかゲートで暴れ、立ち上がってしまいました。それでも前扉が開くと持ち前のスピードを披露してくれました。さすがに最後は迫られた（2着ブルーイレヴンとはアタマ差）けど、レコード決着でしたからね。着差以上の強い内容だと感じ、またGIでもいけるな、と思いました」

　ここでも指揮官の所見は正しかった。続く宝塚記念で2度目のGI制覇を果たすと秋には凱旋門賞に出走。暮れの有馬記念はレコードで走破したゼンノロブロイの2着。そして、2005年の金鯱賞では見事に3連覇を達成してみせた。

「同じ重賞を3連覇出来るチャンスなんて滅多にないですからね。この時は『絶対に勝つぞ』という強い意気込みで出走させました。結果、2着馬に影も踏ませず優勝（2着ヴィータローザとの差は2馬身半）出来ました。改めて『タップは凄い馬だなぁ』と感心しました」

調教師から見た佐藤の第一印象「変わった子だなぁ」

　残念ながらタップダンスシチーにとってはこれが最後の勝利となってしまうのだが、佐々木調教師自身は5年後の2010年にアーネストリーでまたしても金鯱賞を優勝。同馬は翌年、宝塚記念も制してGIホースとなる。手綱を取っていたのはいずれも佐藤哲三騎手。タップダンスシチー以来、佐々木調教師とはすっかりゴールデンコンビとなっていた。ところが、佐々木調教師の佐藤哲三騎手に対する第一印象は決して良くなかったと笑いながら言う。

「レースでうまくいかないとぶつぶつ文句を言いながら壁を蹴るなどしていたので、正直『変わった子だなぁ……』と思っていました。ところが、よく乗せるようになって分かったのですが、彼は研究熱心で情熱家。そしてプロ意識も高いから、うまくいかないとそういう行動に出るのだと感じました。大怪我で引退に追い込まれたのは残念でならないし、タップダンスシチーがああやって好成績を残せたのは間違いなく彼の存在があったからだと、今でも思っています」

アーネストリーとともに宝塚記念を制した佐藤哲三　©Satoshi Hiramatsu

　今年の金鯱賞は13日の日曜日。果たしてどんな勝負が見られるだろうか。タップダンスシチーのような未来のスターホースや、佐々木調教師と佐藤騎手のような名コンビが誕生するかもしれない。注目しよう。