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群雄割拠のRIZINで輝く斎藤裕の“普通”という個性…セコンド上田将勝が語る勝因と“平本蓮への本音”「強かったし、格闘技に真剣」
posted2023/05/02 17:14
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
格闘家・斎藤裕の“普通”という個性
「いい時代になったな……」
国立代々木競技場第一体育館を埋めつくした1万3837名の大観衆を目の当たりにしながら、大歓声を浴びる斎藤裕の傍らにいたセコンドの上田将勝はしんみりとそう思った。
「正直、ここまで斎藤君が注目されるとは思ってもいなかったので」
日本の総合格闘技の老舗・修斗の第10代世界フェザー級王者として“通”の間ではそれなりの評価を受けていた斎藤が、なぜ一般層にも支持されるファイターになったのか。それは二度にわたる朝倉未来との激闘があったからにほかならない。時代の寵児と絡み、初戦では白星を得たことで、その知名度は飛躍的に高まった。朝倉との再戦で使用したグローブがオークションで91万円という値をつけたことも、その人気を如実に物語っている。
元不良vsいじめられっ子の同級生を助ける正義漢、マルチな才能vs格闘技一本……。両者のキャラクターが水と油だったことも功を奏した。好敵手とのキャラが違えば違うほど、斎藤の“普通”という個性は一層際立つ。上田は「斎藤君はRIZINの王者になってさらに強くなった」と評した。
「プロのアスリートとしての振る舞いという面でも成長している。これだけたくさんの人に応援されているわけですからね」
ただ、注目度が高まれば高まるほど、負けたときの反動は大きい。決戦の日が近づくにつれ、トレーナーとしての上田の脳裏には「どうやったら平本蓮に勝たせてあげられるのか」という使命感が重くのしかかってきた。決戦当日の朝に目を覚ましたとき、上田はまるで自分が試合をするかのような恐怖を覚えた。