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CA内定も蹴って芸能界、そしてリングへ…“フェリス卒レスラー”桜井まいがスターダムで闘う理由とは? “突然の裏切り”の真相も語った
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/04 17:02
コズミックエンジェルズからDDMへの移籍でも話題の桜井まい。袂を分かつことになった月山和香とも激しくやり合う
“どれだけ変わったか”が問われる王座挑戦に
DDM入りして、時に裏切り者と呼ばれることもある。行動をともにしてきた月山は、試合でぶつかると怒りで目の色を変えてきた。桜井自身も顔つきが変わった。コズエン時代から「かわいい感じよりSっぽい雰囲気のほうが似合うと思うんですよ」と言っていたが、コスチュームを黒に変えたこともあって鋭く、ふてぶてしくなったのだ。
試合ぶりも少しずつ、よくなっている。批判されながらユニットを変えて、言ってみればもう後がない。必死でやるしかない。2月23日の長岡大会では、3WAYマッチで2番目に勝ち抜け。フューチャー王座の挑戦権を手に入れた。舞台は両国国技館2連戦(3月26日、27日)の2日目。これが3度目の挑戦になる。チャンスであると同時に、スターダムに来て、DDMに入ってどれだけ変わったかが問われる試合でもある。スターダム初戦で挑戦したベルトだけに、思い入れも強い。
DDM入りした2月は、桜井にとってさまざまな節目だった。スターダムに来て半年、デビューから2年。デビューしたのが2月11日で、DDM加入を表明したのは2月12日。レスラー3年目のスタートと同時だったわけだ。体調不良での欠場からの復帰戦でもあった。
「本当に凄いタイミングだったと思います」
桜井の決意「選ぶのは安定よりもチャレンジです」
1月末で芸能事務所を退所してもいた。スターダムで闘うようになってからは「ミス・フラッシュ2022」など以前から続く仕事しかしていなかった。芸能の仕事をすべて終えたらプロレスに専念すると決めていたのだ。
だが、事情を知らないスターダムファンからはキツいことを言われた。ろくに勝てもしないのに芸能活動なんかしてる場合なのか、と。スターダムはファンの数が多いから、いい反響も悪い反響も大きくなる。だが桜井まいに最も必要なのが強さだと、誰よりも感じていたのは彼女自身だった。だからこそスターダムに来たのだ。
「スターダムは前の団体より試合数が多いので、成長のスピードもそれだけ速いと思います。経験が積めますから。強い選手の中で試合をして、自然に気持ちも強くなってる気がしますね。いろんな“ご意見”をいただくので、そういう面でもメンタルが鍛えられました(笑)。
スターダムに来てからはプロレスのことばかり考えていたので、あっという間でした。スターダムの選手はとにかくプロレスが好きでプロレスのことを常に考えてますね。DDMに入って特にそう思いました。長い時間、練習を見てもらって、終わって食事に行ってもずっとプロレスの話、DDMをこれからどうしていくかっていう話をみんなでしてるんです」
いや実際の話“フェリスの読者モデルサークル”から“大手エアラインのCA合格”を経ての“24時間プロレス漬け”は相当な飛距離だと思うのだが、どれも桜井の人生だ。そして、今やっていることが一番好きなのだ。
「選ぶのは安定よりもチャレンジですね。性格としか言いようがないです」
プロレスラーになって、生来の負けず嫌いに火がついた。その火はスターダムで燃え盛る一方だ。「裏切り者」、「弱いくせに」などという言葉は、きっと桜井には燃料でしかない。
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