濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
CA内定も蹴って芸能界、そしてリングへ…“フェリス卒レスラー”桜井まいがスターダムで闘う理由とは? “突然の裏切り”の真相も語った
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/04 17:02
コズミックエンジェルズからDDMへの移籍でも話題の桜井まい。袂を分かつことになった月山和香とも激しくやり合う
安納サオリvs才木玲佳を見て「本当にかっこよかった」
自分の好きなことをやる以上、親には甘えていられない。実家を出て自活するようになった。ただモデル、タレントを志してもすぐにはうまくいかなかった。
「芸能界の厳しさには相当、悩みましたね。オーディションを受けても自分だけ落ちるみたいなこともあって。そういう時に、プロレスをやってみないかって誘われたんです」
桜井としても新しいチャンスがほしかった。スカウトされたのは芸能界からの挑戦が多い“女優によるプロレス団体”アクトレスガールズ。入門前、最初に見に行った大会では、生え抜きの安納サオリが“筋肉アイドル”才木玲佳とタイトルをかけて闘っていた。
「女の子が感情をさらけ出して、痛い思いをしながら闘っている。本当にかっこよかったですね。プロレスって、こんなに心を動かされるものなのかと。もっとこの世界を知りたいと思うようになりました」
2020年2月、青野未来戦でデビュー。アイスリボンとアクトレスガールズの合同興行では、雪妃真矢とフェリス卒レスラー同士のタッグを組んだ。2021年になると、番組で共演したロンドンブーツ1号2号の田村亮、極楽とんぼ・山本圭壱のアドバイスで「ロンドンブーツを着けてのビッグブーツ」を得意技に。話題を作り、工夫して試合をしようとする姿勢が印象に残った。
「プロレスは、芸能界よりも夢がある」
このまま順調に成長していくのかと思われていたが、桜井は突然、アクトレスガールズを退団する。団体の方向性と桜井のやりたいことが違ったためだ。アクトレスガールズは2021年いっぱいでプロレス団体としての活動を終え、プロレスの形式を使ったエンターテイメント・パフォーマンスの「公演」を行なうようになっている。
だが桜井がやりたいのはあくまで「プロレス」だった。もっと試合がしたかった。団体からは、退団を「解雇」と発表されたが、本人もそれで構わなかった。団体をやめてプロレスを続けられるならなんでもよかったのだ。桜井によると、実際には雇用契約を交わしていたわけでもなかったのだが。
もはや芸能活動以上にプロレスが大事だった。プロレスも厳しい世界だったが、その厳しさがはっきりしていた。
「芸能のオーディションに落ちた時って、理由が分からないんですよ。何がダメか言われるわけじゃないし、それだと自分に足りないものも、どう頑張ればいいかも分からない。でもスポーツは勝ち負け、実力の違いが見て分かるじゃないですか。プロレスもそうです。負けてもスッキリする部分がある。頑張ったら上に行けるという意味で、芸能界より夢があるなって」