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廃部報道に「選手はみなショックを受けました」ラグビーW杯躍進にも貢献した宗像サニックスブルースとはどんなチームだったのか
posted2022/02/25 11:02
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
JRLO
冷たい風が吹き付ける中で、80分の試合は行われた。
2月20日、北九州市の本城競技場で行われたラグビーリーグワン・ディビジョン3の宗像サニックスブルース対クリタウォーターガッシュ昭島はタフな試合だった。
ブルースはみごとな試合をした。風上の前半は10-7と苦しんだが、不利なはずの風下に回った後半にチームのアイデンティティである攻撃ラグビーが爆発。元日本代表WTBカーン・ヘスケスの2連続トライなど4トライをたたみかけ、今季最多となる5トライ37点を奪う大勝を飾ったのだ。
戦い終えたFB屋宜ベンジャミンレイ主将は、試合後のオンライン会見で言った。
「報道された通り、僕を含め選手はみなショックを受けました。でも応援してくれるファンのために最後まで乗り切ろう。試合がなくなったわけではないので、目の前の1試合1試合、1日の練習を今まで通り全力で取り組もう。このチームのため、応援してくれたファンのために全力でプレーしようと話しました」
ブルースの選手たちの思いは、対戦した昭島の石井洋介主将も感じていた。
「僕たちも先週のニュースを聞いて悲しい思いでした。知っている選手もたくさんいる。でも今日のブルースのプレーからは1人1人の熱い気持ちが、ブルースというチームをなくしたくない、そのために結果を出したいという強い思いが伝わってきました」
報道――それが流れたのは前週の火曜日、15日の夜だった。
大型ダンプ集団に囲まれた軽自動車
同日、宗像市のクラブハウスで行われたミーティングで、チーム幹部から選手・スタッフに対し「廃部の可能性がある」と伝えられたという。「サニックス廃部へ――」数時間後にはそんな見出しがネットに躍り、翌日の新聞に載った。
サニックスが日本ラグビーの歴史に残してきた足跡を考えると辛い。世界に知られるグローバル企業が居並ぶ日本のラグビー界でサニックスはひときわユニークな存在だった。
親会社の社員数でいえばトヨタ自動車が37万人、パナソニックが24万人……に対しサニックスは約2000人。資本金は神戸製鋼が2500億円、NECが4300億円……に対しサニックスは約140億円。さながら大型ダンプの集団に取り囲まれた軽自動車。しかしこの軽はめちゃくちゃ足回りが良くて運動性能が抜群、ドライバーも優秀だった。