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高梨沙羅いわく小林陵侑は「天才。私と真逆」 LINEで祝福とスタンプ、涙の失格とハグ…“25歳同い年”の優しくて美しい関係性
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/16 17:00
2021年10月、UHB杯で優勝を飾って笑顔を見せた小林陵侑と高梨沙羅。ともに日本を引っ張るジャンパーとしてリスペクトしあっている
「うーん……天才だと思います」
2019年3月、小林が日本男子初となるW杯総合優勝を遂げた翌日、高梨はノルウェーのリレハンメルで再び同級生の印象を語ってくれた。どこかベールに包まれた感じもある性格や人となりを尋ねると、興味深い答えが返ってきた。
「う~ん……天才だと思います」
かつて「天才少女」と呼ばれた高梨から出てきた、最大級の褒め言葉。ただ、ジャンプの天才、というのとは少し違うようだ。
「ジャンプというか、体の使い方がすごく上手でポテンシャルが高い。何をやってもうまくできるんです」
高梨は、スポーツ全般が得意なわけではない。特に球技が苦手で、足も速くないという。それでも、幼い頃から努力を続け、ジャンプで圧倒的な戦績を収めるまでになった。「努力型」の高梨は、どんなスポーツでも得意げにやってのける小林を、ちょっぴりうらやましそうに見ていたようだ。自分とは違うタイプかと問われると、こう答えた。
「真逆だと思います。私は不器用な方なので体育ができなくて、球技もボールに動かされる感じなので(笑)。私は何回も回数をこなさないとできないので、簡単にそつなくこなす陵侑がうらやましいです」
「ちょっぴり」どころではなく、身体能力の高さは相当うらやましそうだった。
小林の性格についても、興味深い考察を披露してくれた。
「ああいう風に、すごく楽観的に考えているように見えて、実はしっかりしている。よく考えているなと思います」
具体的に、どんな時にそう思ったのか。
「ちょいちょい発する言葉で、そういう感じがします。何が自分に合っているのか、自分が何をすべきかを考えられていると思います。ただ、一番にあるのは『楽しむこと』かな。それを彼から感じることは多いです」
口下手な小林の「たくさんハグしてあげました」
あの失格が高梨の心を切り裂いた夜。大舞台で泣き崩れる姿を目の当たりにした小林は、多くの言葉を発することなくただ抱き寄せた。
「たくさんハグしてあげました」
口下手な同級生の優しさは、極寒の会場で高梨の心をそっと温めたに違いない。公式記録に残ることのない、北京五輪の名場面の一つになった。
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