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「今季限りで退任」阪神・矢野監督の“衝撃発言”に、藤浪晋太郎や佐藤輝明らが戸惑わなかった理由「選手たちはもう自立している」
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byKYODO
posted2022/02/09 11:25
プロ野球界の“正月”に今季限りでの退任を発表した阪神・矢野燿大監督
「自然体で」
そう、キャプテンの坂本誠志郎はチーム内の雰囲気を明かしていた。
また、藤浪晋太郎が「矢野さんが辞める、辞めないに限らず活躍したいと思っているので、頑張りたい」と話せば、梅野隆太郎は「(退任を公表しても)自分のやることは変わらない。チームとして戦っていくことが今やるべきことだと思う」と言い切った。
そして、佐藤輝明はプロ2年目ながら「矢野監督らしい」と表現した。
「最初はビックリしましたけど、しっかり言葉にするところが監督らしいなと思いました」
指揮官の教えは確実に伝わっていた。二軍監督に就任した2018年から選手たちには常に「言葉の力と大切さ」を伝えてきた。一軍監督就任後には必ず入団前の新人選手にも訓示。その場では主に目標達成へ向けた心構えを説いていた。
「(例えば)『打てたらいいなと思います』と言っているより、『勝ちます』、『打ちます』と言っている方がずっといい。言い方だよね。(自分も)言霊(ことだま)を大切にしている」
選手たちには常々、目標も「願望」ではなく、「断定」した言葉で伝えることの重要性を説いていた。当然ながら自らも実践。「優勝を目指したいと思います」ではなく、「優勝します!」と言い続けてきた。
言葉の重み――昨年12月14、15日には母校の大阪市立桜宮高校で講師として教壇に立っていた。講演では高校生たちに対しても同じ「言葉の大切さ」についてアドバイスしたという。
ルーキーたちも次々と“断言”
実際、矢野監督が就任後に入団してきたルーキーたちの多くは教えを実践してきた。昨年12月の新人選手入団発表会でも見事に全選手が堂々たる目標を掲げた。ドラフト1位の森木大智が「(藤川)球児さんを超えます」と言えば、ドラフト2位の鈴木勇斗も「メジャーに行って、世界一の左投手になります」と断言。半ば、“強制的”な部分もあるが、目標を明確にし、言い切ることの重要性は若手選手にも浸透している。
そこまで「言葉」を重要視する矢野燿大監督を知るからこそ選手たちは「矢野監督らしい」と受け取った。
また、二軍監督就任時から大切にしていることが、もう一つあった。それは「自主性」だった。