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サッカー界でも“お受験戦争”が勃発? 小6セレクション倍率は300倍、合格者ゼロも…J下部組織入りが「超難関」の理由
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byMasayuki Sugizono
posted2022/02/04 11:06
取材に応じてくれたFCトリアネーロ町田の若山聖祐監督。20年には全国制覇を達成している
一般セレクションは、スカウト網に漏れた掘り出し物を探す意味合いが強いものの、受験する側は親を含めて本気そのもの。学校を休んでコンディション調整することもあり、コロナ禍前の試験会場は子どもを熱心にサポートする親であふれ返っていた。
1クラブに3000円から4000円の参加費を払い、わずかな可能性に懸けて、関東全域に遠征し、複数クラブを受験する選手も後をたたない。セレクションを開催する側も諸経費はかかるものの、合格率の低さにビジネス的な側面をいぶかる関係者もいる。
もちろん、合格通知をもらえる確率はゼロではない。トリアネーロ町田の若山監督は、一般セレクションの事情を知った上であえて言う。
「スカウトが終わった夏以降に爆発的に伸びることもあります。体の機能、身体的な能力が上がったりすると、評価は変わりますから。いまは優れた技術を持っているだけでは合格するのは難しいです。受験したいという選手の挑戦は止めません。セレクションで自分の実力を知るのも経験になると思います」
ただし、シビアな現実もある。Jクラブは小学生年代から有能なタレントを確保するためにし烈なスカウト合戦を繰り広げている。
スクールの特別クラスとは?
ジュニアユース(中学生年代)内定の前段階としてJクラブが運営するスクールの特別クラスに勧誘し、可能性のある選手を4年生、5年生くらいから手元に置くのが主流。川崎はエリート、横浜F・マリノスはスペシャル、FC東京はアドバンス、関西地方も流れは同じで呼び名こそ違っても、どのクラブもいまは選抜クラスを設けて、囲い込みに力を入れる。
週1回または月2回程度、Jクラブのスクールに練習に呼び、普段は選手登録するチームで活動してもらうのが一般的。直轄のジュニアチームは定員数に限りがあること、選手の引き抜きで地元チームとの軋轢を生まない点でもメリットがあるのだ。
スクールの選抜クラスに入るためのセレクションも実施されているが、こちらもスカウト組が一定数いる。クラブによっては一筆書かせて、他クラブの選抜クラスとの掛け持ちを許可していない。関西の育成関係者によると、タレント確保に力を注ぐ傾向は強くなっており、特待生のような形で月謝を免除し、交通費の支給を提示するケースまである。
ちなみにJクラブが運営する選抜スクールの月謝相場は6000円から1万2000円程度。ジュニアユースに入れば、クラブによって条件は異なるが、ユニホーム、ジャージ等のウェア提供、スパイク等の用具支給もある。