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[レジェンド葛西紀明が語る天才性]小林陵侑「鮮やかな着地で栄冠を掴め」
posted2022/02/05 07:03
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph by
AFLO
3季ぶり2度目のジャンプ週間総合優勝を果たし、2度目の五輪の舞台に挑む日の丸飛行隊のエース。所属チームの選手兼監督として見守るレジェンドが、25歳の若武者の驚異的な強さの秘密を明かした。
今シーズンのW杯では第17戦終了時点で4連勝を含む最多の6勝。抜群の安定感で、2回目の五輪出場となる北京に金メダル候補として臨む小林陵侑。所属する土屋ホームの選手兼監督である葛西紀明は、信頼を込めてこう語る。
「コロナ禍で日本に帰国できないですし、滞在地でもレストランやショッピングに行って、リフレッシュしたりもできていないですから疲労が心配。でも万全なら個人2冠を獲得する力は持っていると思います」
高校2年の陵侑を初めて見た時、葛西は、'10年バンクーバー五輪前後に身体能力の高さを認めてライバル視していた、グレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア・W杯53勝)に似ていると感じたと言う。飛び出しの鋭さと、空中で体を「くの字」に保って浮力を受ける溜めを作る飛行姿勢。「もう少し伸ばせば、間違いなく世界チャンピオンになる」。そう思った。
「当時から土屋ホームに入りたいと言っていたけど、それはコーチがフィンランド人で、夏と冬にフィンランド合宿にも行っていて海外からの情報も一番早いから。ここならいち早く世界のレベルに立てると考えていたのだと思います」
その才能は早い時期から開花した。入社1年目、遠征組の代役で出た1月のW杯ザコパネ大会でいきなり7位に入ると、その後の世界ジュニアでは個人、団体ともに3位となり、W杯終盤戦にも出場。そして2年目の'16-'17年はサマーGPで3回ひと桁順位を達成、W杯遠征メンバーに入った。