オリンピックへの道BACK NUMBER
北京五輪へ死角なし! レジェンド葛西の記録を弱冠24歳で塗り替えたジャンプ・小林陵侑の才能の源泉と成長の足跡
posted2021/11/28 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PHOTO
オリンピックシーズンを順調に歩んでいる。そう評しても過分ではないだろう。ノルディックスキー・ジャンプの小林陵侑は、しっかりと大舞台を射程に捉えている。
9月下旬から10月初旬にかけ、国際大会のグランプリは2試合に出場し2位と優勝の成績を収めた。10月には全日本選手権のノーマルヒルとラージヒル、UHB杯(ラージヒル)で3戦全勝。特に札幌大倉山ジャンプ競技場で行われたUHB杯では、飛びすぎる危険性を考え、小林自身も経験したことがないと語る4ゲートという低いゲートからのスタートにもかかわらず、143.5mの大ジャンプを見せての優勝だった。
「冬に向けていい感じです」
「(国際大会で)優勝争いはできるんじゃないでしょうか」
手ごたえを感じて臨んだ11月からのワールドカップは、第2戦こそジャンプスーツの規定違反で失格となったが結果は2位。表彰台に上がり、まずは好スタートを切った。
海外でも、今ではシーズンのチャンピオンを争う存在と注目されている小林。その足跡をあらためて振り返れば、ここに至る変化は急激だった。
ワールドカップは2015−2016シーズンの途中から出場。翌シーズンは開幕戦から遠征メンバーに選ばれたが、代表に選ばれた世界選手権は個人戦に出られず団体戦(ラージヒル)のみであったことが日本代表内での立ち位置を示している。2018年の平昌五輪代表に選ばれたときも、注目度は決して高くなかった。だが大会ではノーマルヒル7位、ラージヒル10位、団体6位と好成績を残した。
転機となった記録ずくめのシーズン
2018−2019シーズン、その才能が一気に開花する。ワールドカップで13勝し、日本勢初の個人総合優勝を果たしたのである。昨シーズンは前半こそ成績が上がらなかったが、2月に日本勢最多タイとなる17勝目、さらに18勝目をあげ、記録を更新。最終的に19勝まで伸ばしてシーズンを終えた。
「前半は悔しかったけれど持ち直せたので、収穫のあったシーズンでした。メンタルも落ち着いてきて、前半からのジャンプの見直しもかみあってきました」
他国の選手からもマークされる立場になり、またかかる期待も大きくなっていった。その中でいかに精神面を安定させるかがポイントの1つだったが、専門家によるメンタルトレーニングも生かし、調子を取り戻していった。