「グーンと成長していく過程では、そういう意識が成長を抑えてしまう気がするから」

――考えてもみなかった意見です。

「成長するタイミングで一気に、グーンと伸びないと、本当のトップまでたどりつけない気がする。日本の真面目なところはすごく良いんだけど、それだと枠にはまった選手にしかならないかもしれない」

板倉君にも“あの満員の雰囲気”を味わってほしい

――日本だと、調子に乗ることをいましめる傾向がありますよね。

「もっと、調子に乗って良いと思う。ただ、ユリアンなんかは特にそうだけど、ずっと自主練していたのも事実だから。左45度の角度に落としてもらったボールをシュートする練習をひたすらやっていた。そういうものが試合で1度ポンと出て、そこから自信を持って……。ユリアンなんて、デビューは17歳とかで、当時は『日本からドラゴンボールのフィギュア買ってきてくれ』とか言っていたのに（笑）」

――成長する過程ではブレーキをかけないことが大事だと？

「あとは、監督の使い方も上手いと思う。オレが『そろそろ試合で使っても良いころかな』と思うよりも、早いタイミングで試合に出すから」

――では、最後にシャルケへのメッセージをお願いします。

「『あの頃のシャルケのように強くなって……』みたいに言われると、今、シャルケでやっている選手からしたら嫌かもしれないけど、またチャンピオンズリーグに出られるようになってほしい。あとは、あのスタジアムの雰囲気は最高だから。あれはなくならないでほしい。コロナが明けて、シャルケも1部にあがって、オレがやっていたときのような満員のホームゲームのあの雰囲気を、ぜひ板倉（滉）君には感じてもらいたいです」

――板倉選手がシャルケに移籍する前には相談に乗ったそうですが、彼はキッカー誌で今季前半戦のブンデスリーガ2部の最優秀センターバックに選ばれるほどの活躍を見せています。

「偉そうに聞こえるかもしれないけど、『オレの次にシャルケに行く選手にはちゃんとプレーしてもらいたいな』と秘かに思っていたから、板倉君が活躍しているのは、すごく嬉しい」

――コロナが明けたらアンバサダーの活動も本格化しそうですね。

「本当にそうです。日本の若い子たちに練習参加してもらいたいし。シャルケとしてもプレシーズンに日本へ来たいと考えているみたいだから、Jリーグのチームと試合をしてほしいな。あとはむこうで、練習を見せてもらいたいな。指導者のはしくれとして、練習の内容とかをじっくり見せてもらえたら面白いだろうなぁ」＜第1回、第2回から続く＞

#1から読む

《内田篤人単独インタビュー》「だから、今の仕事は本当にありがたくて」 “コーチ第一歩”での悩みとシャルケ・アンバサダー就任の真相

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。