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内田篤人が「勝って兜の緒を締めよ、はたまに意識するくらいで」と語る真意… 育成年代への還元案とシャルケ復活への願い
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2022/02/05 11:03
サウジ戦でもピッチサイドで“好解説”してくれた内田篤人。シャルケと日本サッカーへの思いはとても強いものがある
「そう。彼が要求するレベルに届けば、チャンスをくれる。そういうところが良い監督だと思う。一度、外したら、その後にほとんどチャンスを与えない監督もいるけど、彼はどの選手のことも平等に見ていたから」
一緒にプレーした選手で印象に残るのは?
――なるほど。
「そういえば、CLの試合の翌日だったかな、オレのところに来て、『昨日のオマエのパフォーマンスはどうだった?』と聞かれたことがあって。『ひどくはなかったけど、良くもなかったです』と答えたら、『そうだよな』と納得して帰っていった」
――そこにはどういう意味が?
「パフォーマンスについての認識が似ているということです。『あのレベルはギリギリ合格点で、もっとやってくれよ』と監督は考えていたと思うし。一般的に、監督と選手の間に溝が生まれるときって、選手が『オレはこんなに良いプレーをしているのに、どうして評価されないのか?』と感じたときがスタート地点だと思っていて。逆に、そういう基準が監督と同じだと大きい。あの時は、同じ感覚だと思えたことが良かった」
――シャルケで一緒にプレーした選手で印象に残るのは?
「パッと浮かぶのは、サネ(*3)」
(*3 シャルケの組織所属の18歳でデビューし、19歳でプロ契約を締結。マンチェスター・シティを経て、昨季からバイエルンでプレーしている。昨季は本領を発揮したとはいえなかったが、今季は公式戦28試合出場で12ゴール、13アシストを記録し。フリック政権下の新生ドイツ代表でもキーマンとなり、6試合出場で4ゴール、1アシスト。さらなる飛躍を遂げた感のある26歳のアタッカー)
――今季はバイエルンだけではなく、ドイツ代表でも輝いています。
「サネがユースにいて、トップチーム(の練習)に参加しているときから見ているけど、当初はあまり上手いとは言えなくて。クロスの練習でも正確に蹴れず、ボアテングやアオゴに怒られていたし。
でも、試合で使われるようになって半年から1年で、見違えるほどに成長した。あの成長スピードには『日本にいたら考えられないな』と驚いたね」
健気に給水ボトルを運んでいたのに「へい、ウッシー」
――そんなにですか?
「身体も大きくなったし、自信も持つようになった。デビューした頃は、練習後にはオレと一緒に、健気に給水ボトルを運んでいたのに、いつのまにか『へい、ウッシー(*内田氏のニックネーム)!』と肩を組んでくるような感じになって」
――自信をつけたのですね(笑)。
「オレはずっとボトルを運び続けていたけど、アイツは2年目くらいからやらなくなった。しまいには『ウッシーは、いつもボトルを運んでエラいなぁ』とか言うようになってた (笑)。ユリアン(ドラクスラー)もそうだった。そういう意味でも、成長が速い」
――自信をつけたということなのでしょうね。
「日本では『勝って兜の緒を締めよ』ということわざがあるでしょう? でも、サッカーの世界では、そんなのは、たまに意識するくらいで良いと思う」
――それはなぜ?