甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭に受け継がれる主将の系譜…168cmの新キャプテン星子天真に勇気を与えた「福井さん」《昨秋は公式戦負けなし》
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2022/01/28 17:03
大阪桐蔭の新キャプテンを務める星子天真。先輩のアドバイスをもとに、センバツ大会に臨む
「自分は成長が周りより早かったみたいで……同級生の身長がどんどん大きくなって、自分はだんだん小柄な方になっていって。たくさん食べたり牛乳を飲んだりしても横にしか大きくならなかったんです。でも、甲子園で森さんは小柄ながら活躍されていたし、自分も体をいっぱいに使って、大きい選手よりも大きく見せようと思っていました」
ただ、選手としてはU12、U15に選出されるほど野球センスは長けていた。幼い頃から周囲をまとめる牽引力も持ち、小学校、中学校でも所属チームのキャプテンを務めた。
憧れだった大阪桐蔭への進学はやがて目標となり、そして現実になった。高校野球界をリードする存在と言われる学校でもキャプテンを務めることを強く志して、門をくぐった。
痛感させられた大阪桐蔭のレベル
だが、現実は甘くないことを入学直後からまざまざと見せつけられた。
「入ってすぐに感じたのは野球レベルの高さ。同級生はもちろんですが、先輩のプレーの凄さに圧倒されて、自分が未熟者だということに気づかされました」
それでもがむしゃらに白球を追った。そんな中、練習の準備なども含め、まずは何ごとも率先してやることを心掛けた。実力でも先頭に立つことは目標だったが、周囲のレベルの高さを冷静に受け止め、どんな状況でもネガティブにならずに必死に先輩たちに食らいついていった。
学年のまとめ役も務め、周囲からの人望も厚かった。九州男児らしい熱血さ、情の厚さも星子のトレードマークだ。そして昨秋、チーム内の投票でキャプテンに選出された。試行錯誤の日々の方が多かった自分が実際にキャプテンをやっていいのかという不安もあったが「自分に票を入れてくれた仲間がそう思ってくれているのなら、自分が頑張るしかない」と腹を括った。
そんな中、初めにぶつかった壁は「勇気」だった。厳しい言葉を周囲に伝えるには、ひとつの覚悟がいる。だが、その覚悟がなかなか備わらず、葛藤が続いた。
「自分が嫌われてしまうんじゃないかという恐れがあって、なかなか言いたいことを言い出せないことが多かったんです」