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「プロレスファンは自制心が強いな…」感染急拡大の今こそ知りたい、聖地・後楽園ホールでカメラマンが見つめた“コロナ禍との戦い方”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/01/23 17:00
1月3日に後楽園ホールで開催されたDDTでドロップキックを放つポコたん(男色ディーノがプロデュースしたゆるキャラ)。オミクロン株拡大前のマット界は“日常”を取り戻しつつあった
ファンがいなければ大会は行えず、大会が開かれなければ会場は使われない。会場がなければ大会は行えず、大会が行われなければファンは好きなものを見ることができない。共存関係でもある三者の関係性は、相互の協力という形を成立させ、2年間の戦いがようやくある変化をもたらすに至った。
プロレスが教えてくれた大切なこと
この年末年始の後楽園ホールにあった変化。それは、感嘆、驚愕、そして笑いという素直な反応があったことだ。「大声はお控えください」というお願いは「声を出してはいけない」とは変換されず、文字通りの意味で機能していた。ようやくそこまできていたのだ。
そんな状況からの感染再拡大。しかし、一度見えかけた希望は、ファイティングポーズをとり続ける力にもなる。
1月4日、東京ドームでマイクを握ったオカダ・カズチカは「何度倒れても、僕たちレスラーは立ち上がりますので、みなさんも一緒に立ち上がって、コロナに勝ちに行きましょう」と観客を鼓舞した。翌日には「やっぱり、声援のある中でプロレスがしたい」とここまでの道のりを思い出して涙し、「もう無観客に戻りたくないですし、しっかりと、みんなの前で戦っていきます」と言ってみせた。ファンは、オカダに声援を送りたくてたまらないこの状況でも、声援ではなく拍手で応えてみせた。
これらの様子は、「コロナ後の世界」のあり方への1つの理想的な回答だった。
苦しい状況を打破しようと前を向き続けることと、現状に沿ったマナーを守ることは決して矛盾するものではないのだ。一度かつての“日常”に近づき、「今回はルールを守らなくても仕方がない」という雰囲気も出てきてしまっているこのタイミングでこそ、相互に協力し合うことの大切さを改めて認識しておきたい。
プロレスは色々なことを教えてくれる。どんな時であろうとも。
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