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ベーブ・ルース「女性は脆すぎる」 野球の神様を三振させた投手は“性差別”で引退…米大学野球を目指す女性豪州リーガー17歳の未来は? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph by球団公式Twitterより

posted2022/01/25 11:00

ベーブ・ルース「女性は脆すぎる」 野球の神様を三振させた投手は“性差別”で引退…米大学野球を目指す女性豪州リーガー17歳の未来は?<Number Web> photograph by 球団公式Twitterより

1月8日に、豪州野球リーグでデビューを飾ったメルボルン・エイシズのジェネビーブ・ビーコム投手(17)

「ベーブ・ルースから三振を奪った」女性投手

 MLBの長い歴史の中で「女性投手」が誕生しそうになった記録が残っている。1931年、今も現存するマイナー球団チャタヌーガ・ルックアウツに、今のビーカムと同じ17歳で左腕投手であるヴァーン・ベアトリス(通称ジャッキー)・ミッチェルという女性がいた。彼女はヤンキースとのオープン戦に救援登板し、ベーブ・ルースと対戦している。

 記録によると、ミッチェルは「ドロップ」と呼ばれる変化球(著者注:おそらく「昭和の時代」によく言った「縦のカーブ」のことだと思われる)攻めで、二球の空振りを含む見逃し三振に打ち取ったという。

 続くルー・ゲーリックも連続三振に切って取ったミッチェルは、後続に四球を与えて降板したそうだが、総立ちで拍手喝采した地元の観客とは対照的に、試合後のルースから辛らつなコメントを送られている。

「男性が女性に野球をさせるとは思えない。なぜかって? 女性は脆すぎるし、毎日プレーしたら死んじゃうよ」

MLB史上最初の性差別

 MLB史上(おそらく)最初の性差別が公然となったのは、その数日後だった。黒人選手のMLB参入を拒み続けたことで知られる初代コミッショナーのケネソー・マウンテン・ランディスが、「彼女にとって、野球は激しすぎる」として契約を無効にしたのだ。ミッチェルはその後、マスコット的に登板するに留まり、その屈辱に耐え切れなくなって23歳で引退。数年後に始まった女子野球リーグの参加要請にも応じなかったという。

 その後もニグロリーグや米独立リーグで女性選手が誕生した痕跡が残っており、近鉄バファローズの入団テストも受けた左腕アイラ・ボーダーズ投手や、日米の独立リーグに所属した「ナックル姫」吉田えり投手など、注目された女性選手が何人か現われている。

 完全に独立した女性だけのリーグでプレーする選手は今でも多いが、そこで突出した実績を残せるなら、男性のリーグに挑戦したって良いはずだし、ビーカムのような左腕投手が、米国の大学野球で活躍し、ドラフト指名を受け、マイナーリーグでも活躍すれば、初代コミッショナーの歴史的裁定が「間違いだった」と、現コミッショナーのロブ・マンフレッドが謝罪することになるかも知れない。

 そういう意味では、日本の女子野球選手たちにも、ビーカムや、バルコベックが歩んだ道を選べるチャンスがあるのかも知れない。

 もちろん、彼らの背中を追うには、野球の練習など当たり前。英語を勉強するのも、筋トレするのも、栄養を考えた食事を摂るのも野球のため。野球に人生のすべてを捧げるような生き方になってしまうかも知れない。

 そうした上で野球選手なら、「豪州リーグの育成契約(とそれ以降の活躍)」に匹敵する実績、監督ならば「運動生理学やスポーツ・マネジメントの修士号を取得し、MLBのファーム組織でストレングス&コンディショニングの責任者を務める」ことに比肩する実績を残すことができるのならば、今は遥か遠くに見えている「メジャーリーグ」も、何だか近くに感じられるようになるだろう。

 大谷翔平選手が、「投打二刀流」でベーブ・ルースを再発見したように、いつの日にか日本の女子野球選手が米球界で活躍し、「女性は脆すぎるって、誰が言ったんだっけ?」と、墓場で眠る球聖を叩き起こしたって、今さら誰も怒らないはずだから――。

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