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ベーブ・ルース「女性は脆すぎる」 野球の神様を三振させた投手は“性差別”で引退…米大学野球を目指す女性豪州リーガー17歳の未来は?
posted2022/01/25 11:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
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球団公式Twitterより
現地時間1月8日、北半球が冬の間に開催されるオーストラリア(以下、豪州)野球リーグ(ABL)で、メルボルン・エイシズの左腕ジェネビーブ・ビーコム投手(17)が1回無失点でデビュー戦を飾った。その翌々日、MLBネットワークにネット出演した「彼女」は、その歴史的な快挙を持ち上げようとする質問者に対し、こんな風に答えている。
「最初の一球を投げるまでは緊張しましたが、二球目からはいつも通り投げることができました。登板した時は相手に勢いがあったので、とにかく抑えたかっただけです」
豪州リーグ史上初の女性選手、ただのマスコットではない
ビーコムはABL史上初の女性選手である。彼女が所属するエイシズは、かつて西武の森友哉捕手や高橋光成投手、オリックスの宗佑磨外野手らも武者修行したチームだそうで、ABLからは他にもアクーニャJr.、豪州出身でホワイトソックスの守護神リアム・ヘンドリックス投手や、レイズのケビン・キアマイアー外野手を輩出している。
救援投手として活躍したブレーブス時代、川上憲伸氏の同僚だったこともあるエイシズのピーター・モイラン監督は、その数日前に行われた入団会見の際、地元メディアにこう語っている。
「この若い女性がオーストラリア国内のトップ選手たちと対戦したり、野球選手として成長するのを中学生の頃から見てきた。もしも誰かがこれ(育成契約)を単なる象徴みたいなものだと思うのなら、考え直した方がいい。彼女はメルボルン・エイシズの育成リストの座を、100%(競争の上で)勝ち取ったのですから」
象徴≒マスコット。MLBネットワークの質問者が「将来はメジャーリーグ(MLB)を目指しているの?」とおざなりの質問をした時も、ビーカムは「はい、メジャーリーガーになりたいです!」などと答えず、マスコット扱いされるのを拒否しているようだった。
「より高いレベルでプレーするというのは誰もが夢見ることだと思いますが、自分がどこまで行けるのか、見ていきたいですね」
17歳の彼女にとっての現実的な目標は、高校卒業後の2023年以降に、米国の大学の野球部でプレーすること。誰もが想像するような「夢」ではなく、現実的な「目標」に向かって、彼女は絶好のスタートを切った。