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「将来は男性として生きていきたい」元なでしこ横山久美(28歳)が明かす新婚生活と、スタジアムでのサプライズプロポーズ
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byGetty Images
posted2022/01/09 11:00
リーグ優勝を決め、なみさん(右)をピッチに迎えた横山久美
「(アメリカでは)チームメイトで女性の方と結婚している方もいれば、パートナーとして一緒に暮らしている人もいます。一般的にみれば、反対している人も実際はたくさんいるんでしょうけど、それを感じさせないぐらい理解があるし、温かいなと感じました。だから、みんな堂々としているなと感じます。そういう生き方はシンプルにカッコイイと思うし、否定的な言葉を投げかける人がいても、周囲が応援してくれているので。今はいい環境なのかなと感じています」
パートナーのなみさんの言葉もカミングアウトを決意させるきっかけとなった。
「顔も名前も知られている分、隠していても生きづらさを感じるよと言われて。男性だろうが女性だろうが、自分は自分だ、と。ありのままの自分がいいよと言われ、カミングアウトに踏み切れた部分もありますね」
反応が怖かったという父親からも、「母に確認したら、『YouTubeもニュースも見てるわよ』と言われ、あわてて父親にLINEを送りました。そしたら、『(今まで)つらかったね』『これから一緒に頑張ろう』みたいな言葉がかえってきました」
あれから半年。今は「目に見えないものから解放されたというか、気持ちがすごく楽になりました」と話す。カミングアウト以前はSNSでプライベートのことを載せるのも躊躇することがあったが、今は気兼ねなく載せられるようになった。
「全員が理解するのは無理だと思います」
今回のカミングアウトにあたっては、否定的な言葉もあったが、予想以上に多くの人からポジティブなコメントが寄せられたという。
「『自分もそうです』という方々も本当に多かったんです。逆に『自分は隠しています』という声もありました。そう考えると、自分も影響力があるんだなって。ただ、カミングアウトする、しないは本当に人それぞれの自由で、したくない人はしなくていいと思います。カミングアウトしていいこともあれば悪いこともある。自分は悪いことを言ってくれることもありがたいなと思いますけどね。
賛否両論がないと話し合いができないし、世の中すべていいことばかりが起きるわけでもないので。逆に、自分のためにもなるし、いろいろ学べるのかなって。ただ、考え方は人それぞれですから」
世界が性の多様性を認めるような動きを見せるなかで、日本でもLGBTという言葉が一般的になりつつあるように、トランスジェンダーに対する理解は年々深まりつつある。彼らを取り巻く社会制度、環境は議論と対策が行われ、少しずつ変化の様相も見せている。一方で、戸籍変更や結婚のハードルは高く、まだまだ課題も多い。
「全員が全員、理解してほしいと期待するのは難しいというか、無理だと思います。これはトランスジェンダーに限らないこと。ただ、まずは知ってもらうことが大事だと思っていて。理解をしてほしいから頑張って動いたりすると、人間って、けっこう拒否反応が出てしまうんですよね。だから、『理解してください』というスタンスよりも、まずは『こういう人たちもいるんですよ』というスタンスで見ていただけるだけでもいいのかなと思います。自分がそこで何か協力、還元できることがあれば」
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