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冨安健洋はプレミア最強マンCにとって「極めて厄介な存在」だった… 名将ペップも認めたアーセナルの成長とは
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byGetty Images
posted2022/01/06 17:04
首位を走るシティ相手にハイパフォーマンスを見せた冨安。改めて不可欠な存在であることを証明した
冨安加入前のシティ戦は0-5の惨敗
冨安の復帰を喜んだのはコーチ陣も一緒だ。チームを率いるミケル・アルテタ監督は試合3日前にコロナ陽性が明らかになり、自宅からリモートで指揮を執った。ベンチから直接指示を出すのは、アシスタントコーチのアルベルト・スタイフェンベルグ。試合前、51歳のオランダ人コーチは次のように話した。
「トミヤスはプレミアリーグの1年目で簡単ではないだろうが、我々にとって非常に重要で、安定感のある選手だ。コロナから復帰し、先発メンバーに選ぶことができて本当にうれしい」
冨安のポジションは、これまでと変わらず4-2-3-1の右SB。対するシティは4-3-3を採用した。左FWラヒーム・スターリング(イングランド代表)と左インサイドハーフのケビン・デブライネ(ベルギー代表)のワールドクラスをいかに抑えるか。ここが、冨安の最重要タスクだった。
振り返れば、アーセナルは冨安加入前のプレミアリーグ第3節(8月28日)でシティに0-5の惨敗を喫している。この試合のスタッツを紐解くと、シティのシュート数「25本」に対し、アーセナルはたったの「1本」。チーム力の差を考えても、冨安にとって今回のシティ戦は最大の関門のように思えた。
しかし結論から言えば、冨安はほぼ完璧な守備で突破を許さず、攻撃参加でも存在感を存分に示した。1-2と敗れはしたが、冨安のいるエリアから決定機を与えることはなく、むしろシティを攻守両方で大いに苦しめた。
スターリングとのマッチアップにことごとく勝利
特筆すべきは、ことごとく勝利したスターリングとのマッチアップだろう。前半8分にはスターリングへのパスをカットして前を向かせず、同13分にもスピードが自慢のイングランド代表のドリブル突破を許さなかった。強度の高い守備でスターリングを抑えていくと、前半終了間際にはアーセナルサポーターから「スーパー、トミヤス!」のチャントが沸き起こった。
冨安のエリアに頻繁に流れてきたデブライネに関しても、CBのベン・ホワイトとの連係で巧みに封じた。サイドに流れるデブライネに冨安が付いていけば、代わりにホワイトがサイドのカバーに入り、スターリングをケアした。反対に、ホワイトが前方に釣り出されたら、冨安がサイドから中央に絞ってカバーする。2人は時折、互いの顔を見ながらマークの受け渡しをスムーズに行なっていた。
チーム自体も好調だった。アーセナルは中5日でこの一戦を迎えたが、シティは中2日の強行軍で、コンディション面でアーセナルに遅れを取っていた。そのアーセナルが敵陣に押し込むと、エミレーツ・スタジアムの雰囲気も「これは行ける」と前向きなトーンでチームを後押しした。