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冨安健洋はプレミア最強マンCにとって「極めて厄介な存在」だった… 名将ペップも認めたアーセナルの成長とは
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byGetty Images
posted2022/01/06 17:04
首位を走るシティ相手にハイパフォーマンスを見せた冨安。改めて不可欠な存在であることを証明した
勢いに乗ったアーセナルは、前半31分にブカヨ・サカのゴールで先制。ハーフタイムになると、テレビ解説を務めた元イングランド代表DFのリオ・ファーディナンドも「アーセナルの出来が素晴らしい。シティをボールポゼッションで不快にさせている。前向きなプレーがゴールにつながった」と手放しで褒めていた。
後半に失速したもったいない試合
しかし、である。後半に入ると、アーセナルは音を立てて一気に崩れ落ちた。
試合の流れを劇的に変えたのは、アーセナルのグラニト・ジャカがベルナルド・シウバのユニホームを引っ張り、不用意なファウルでPKを献上した後半10分のシーン。PKを決められ1-1の同点にされると、その2分後にはガブリエウが2枚目の警告で退場……。数的に不利に陥ると、後半終了間際に決勝弾を奪われ1-2で手痛い逆転負けを喫した。
試合後の英メディアでは、スチュアート・アトウェル主審を中心とする審判団の「一貫性のないレフェリング」に批判が集まった。
前半にアーセナルがPKを獲得したように見えた場面では、VARでノーファールの判定に。一方、後半にシティがPKを奪った場面では、VARチームがアトウェル主審に最終判断を一任した。判定基準が極めて曖昧で、英紙タイムズのヘンリー・ウィンター記者も「審判団の質が向上しなければ、VARのシステムもうまく機能しない。疑惑の場面は2つともPKが与えられるべきだったが、判定基準に一貫性がなかった。試合を台無しにした」とツイッターで苦言を呈したほどだ。
ただ、こうしたレフェリングのまずさを抜きにしても、アーセナルの若さゆえの脆さが露呈された一戦でもあった。退場処分となったガブリエウは、PKでの失点後に主審への抗議で1枚目の警告を受けていたが、その直前にペナルティスポットを爪先で蹴り、PKの足場を悪くしていたことが主審の心証を悪くしていた可能性がある。
その2分後に、相手への不用意なタックルにより2枚目の警告で退場に。感情のブレーキをかけていれば、どちらの警告も回避できたはずだ。前半の内容から言えば、アーセナルが勝利していたと考えるのが妥当であり、非常にもったいない試合だった。
試合終了のホイッスルが鳴ると、最後まで守備に走り回っていた冨安は地面に崩れ落ちた。ホワイトやキーラン・ティアニーのDF陣が一斉に倒れ込んだことから、選手たちの疲労は相当なものだったのだろう。後半に2つのゴールを許し、逆転負けした精神的ダメージも大きかったように思う。