力がある3年生とエース三浦がいる2年生がチームにいる中、4年生は「誰を走らせても変わらない」という世代だった。それでも彼らは「金太郎飴を払拭したい」と、地道に努力を続けてきた。それが順大というチームのベースを築くことになるのだが、突出した存在の選手が出ない分、同じような力ゆえに誰かが何かを達成すれば自分もできると思えるマインドが育つ。「復路の順大」の復活は、そのマインドが生んだ結果でもあった。

　今回、順大は三浦の止血、伊豫田と石井の反撃、4年生の快走がリンクし、総合3位内の目標を達成した。来年は、頂点への戦いに臨むことになる。

「うちはまだまだなので、追う立場で行きたいと思います」

　ただ、総合2位になったとはいえ、総合優勝した青学大に10分51秒の大差をつけられた。それを縮めていくのは容易ではない。長門監督も「青学との距離はだいぶあります。常に区間上位で走る力が備わっていますし、乗ったら強い。今回は一度も背中が見えなかった」と、その強さを認めている。だが、順大も選手層では負けていない。来季は今回出走した平、伊豫田、四釜峻佑、西澤、野村ら3年生が最上級生になり、その下には石井、三浦がいる。上級生が100％の力を発揮すれば青学大や駒澤大にも十分、対抗できる。

　もちろん課題もある。

　長門監督は湘南エリアを鬼門としていたが、これからは1区が鬼門になりそうだ。過去を紐解くと19位、18位、10位、そして今回の18位と軒並みスタートダッシュに失敗している。この新たな鬼門をどう乗り切り、いい流れを作れるか。また、6区で区間賞を獲った牧瀬が卒業するので、下り適性のある選手を見つける必要がある。チーム全体としては、「今後は、スタミナを強化しないといけないですね。挽回する力、駅伝力、勝負する力は身についてきたので、あとはレースを押し切るスタミナをしっかりとつけていきたい」と語ったが、それは奇しくも駒澤大の大八木弘明監督が来季に向けて挙げた課題と同じだった。

順天堂大学の長門俊介監督（写真は2020年取材当時）　©Ichisei Hiramatsu

　一方で2位になり、順大は強いとの印象を他チームに与えた。面子が揃い、今回18位から2位にまで階段を駆け上がってきたチーム力を警戒するのは当然だ。青学大、駒澤大ら強豪校にマークされる存在になるだろう。

「いや、うちはまだまだなので、追う立場で行きたいと思います」

　指揮官の謙虚な言葉の裏には、来季への自信が見え隠れしている。