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格闘技PRESSBACK NUMBER
視聴率43%で紅白超え…格闘技バブルの象徴「サップvs曙」を撮らなかったリングサイドカメラマンが“大晦日の名勝負”を振り返る
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/12/31 11:04
2015年のRIZIN旗揚げ興行で、12年ぶりに再戦した曙とボブ・サップ。筆者は12年前の大晦日、同日に開催された『PRIDE 男祭り 2003』を撮影していた
2006年、TBSは引き続き『ダイナマイト』を放送。フジテレビは同年6月にPRIDEとの契約を解除したので、『PRIDE 男祭り』は地上波での放送はなかった。
2007年3月にPRIDEはUFCへ売却され、消滅してしまう。しかし、旧PRIDEスタッフが集い、一夜限りのイベント『やれんのか! 大晦日! 2007』を開催した。このイベントのうち2試合は、ダイナマイト協力試合として、TBSの『ダイナマイト』で放送された。私は『やれんのか!』に行ったのだが、PRIDEロスで心の拠り所を失くした観客がこの日の会場へ駆けつけ、その熱気が凄まじかった。三崎和雄が秋山成勲をKO(後にノーコンテストへ変更)した瞬間の大歓声は、PRIDE時代の熱気を凌ぐものだった。ただ、試合後の三崎のマイクアピールはかなり長く、その内容は忘れてしまった。
「ポキッ」と骨が折れる音が…青木真也の暴走
2008年の春、旧PRIDEスタッフがDREAMというMMAの新団体を立ち上げた。大晦日にはK-1とDREAMが手を結んで『ダイナマイト』を開催。2003年から大晦日には複数のイベントが開催されていたのだが、ようやくひとつのイベントに集約された。
2009年、『ダイナマイト』がさいたまスーパーアリーナで開催。魔裟斗の引退試合とセレモニーがメインイベントだったが、セミファイナルの青木真也の行動が物議をかもすことになった。青木は対戦相手の廣田瑞人の腕を躊躇なく折り、舌を出しながら中指を立てた。その後も会場中に向かって中指を立て、観客を侮辱した。私としては、青木が中指を立てたことよりも、骨が折れた「ポキッ」という乾いた音の方が脳裏に残っている。
2010年の大晦日を最後に、地上波での格闘技放送はしばらく中断される。この大会も青木真也が主役となった。前年の廣田戦で完全にヒールになった青木は、キックボクサーの長島☆自演乙☆雄一郎と対戦。1ラウンド目がキック、2ラウンド目がMMAのミックスルールだ。青木は最初のラウンドでドロップキックやクリンチなど、得意のMMAルールへ行くための露骨な時間稼ぎをした。2ラウンド開始早々、青木のタックルに長島の右跳び膝蹴りが直撃し、青木はマットに沈んだ。その瞬間、観客だけでなく、解説席の魔裟斗までもが我を忘れて喜びをあらわにした。