「Libreに残ってもメンバーがいないことは知っていました。試合をする人数すらも揃えられないということも……。でも、このまま坂本さんや平井（勇・監督）さんの下でやり続ければ技術では誰にも負けないぐらい成長できると思ったんです」

　FC Libreのジュニアユースで同級生はたった1人だけ。上の学年に10人いたことでなんとか神戸市の大会には出場することができたが、以降は人数が減ったことで公式戦どころか試合を組むことさえも稀だったという。この神戸市の大会が冒頭で紹介した“唯一の公式戦”で、2回戦で敗退したことで出場数は「2」のままになった。

　練習場所は、どの街にもよくある「公園」。固い石が転がる広場でサッカーボールを蹴り続けた。フルコートのピッチも、正規のゴールもなければ、もちろん他の利用者もいる。そんな環境でも壁やフェンスをゴールに見立て、コーンを配置したミニゲームなど、日々工夫しながらサッカーに打ち込んだ。

「人数はいなかったけど、毎日の練習メニューが本当に特殊で、僕らはそれを『SASUKE』と呼んでいました。コーンと工事現場によくある黄色と黒のバーをいろんな形に組み立て、そこをリフティングで攻略する。特定の技で突破できたらクリア！ みたいな練習をしていました（笑）。

　あとは、1人2組になって2個のボールをリフティングでパス交換したり、同じことをテニスボールでやってみたり。めちゃくちゃ難しいのですが、それを坂本さんや平井監督は平気でこなしていく。それを見て『めっちゃすごい、ああなりたい』と思っていました。ユニークなトレーニングだったので、飽きませんでしたね」

　ただ試合となると、話は別。練習試合では人数が足りず、相手チームから選手を借りることも珍しくなく、時にはスクールにいる小学2年生や3年生の力まで借りた。

「いざ試合となってもポジションの役割はわからないし、チームとしての連係もバラバラ。でも、常にボールを触って、（ボールを）運ぶことを意識してやっていました。小さい子がいるエリアはなるべく僕がフォローしようと考えながらプレーしていましたね（笑）」

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