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井上康生(43歳)が考える、この先の日本柔道に必要なこと「強いだけではダメだと思うんです」「監督なんて、頼りなさそうなくらいが…」
posted2021/12/30 11:06
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Tomosuke Imai
東京五輪で柔道全日本男子チームを率いた井上康生前監督。柔道男子史上最多となる5個の金メダルをもたらした男は何者だったのか――。井上を近くで見てきた人々と本人の言葉から、その“実像”を明かしていく短期連載「静かなる革命児」。
最終回は、#7に引き続き本人インタビュー。本連載に登場した5人の証言の真意を尋ねながら、改革者としての「井上康生」に迫る。(全8回の#8/#7へ)
最終回は、#7に引き続き本人インタビュー。本連載に登場した5人の証言の真意を尋ねながら、改革者としての「井上康生」に迫る。(全8回の#8/#7へ)
「私は、パクリの名人なので」
――日本代表で「最強かつ最高」というキャッチフレーズを掲げていましたが、あれは名コピーでしたね。
井上康生(以下、井上) 1つには勝利至上主義で何が悪いんだ、という思いがあります。われわれが与えられている使命の第一は勝つことでしょう、と。ただ、50年後、100年後の日本代表を考えたときに強いだけではダメだと思うんです。「勝ち」と同時に、日本代表としての「価値」も高めていかなければなりません。それを示すために、印象的なワードをポーンと示すのは、すごく有効じゃないですか。
――常々思っていたのですが、言葉選びのセンスがありますよね。
井上 いや、私が使っている言葉のほとんどは、どこかからのパクリです。私は、パクリの名人なので。本を読むのが好きで、スポーツ関係だけじゃなく、ビジネス関係の本もよく読むのですが、そういうところからパクリまくってます。「熱意、創意、誠意」という言葉もよく使うのですが、これも完全に本からパクってます。
――その認めっぷりが、じつに気持ちいい。
井上 言葉を使うのは自由じゃないですか。ただ、それをどういう状況で、どう使うかが大事だと思うんです。なので、パクってることを隠す必要なんてないと思うのです。私は素直に使わせていただきました。それで目標を達成できればいいので。すいません。