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井上康生(43歳)が考える、この先の日本柔道に必要なこと「強いだけではダメだと思うんです」「監督なんて、頼りなさそうなくらいが…」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTomosuke Imai
posted2021/12/30 11:06
井上康生の実像に迫る短期連載。最終回は本人インタビュー(取材協力 公益財団法人講道館)
井上 95キロとか、96キロぐらいですかね。現役時代は103か104くらいあったので、10キロ弱減量した感じです。
――もっと痩せたように見えますよね。ウエスト周りがすごく細く見えます。
井上 繰り返しになりますが、見た目ですから。現役時代、腹筋なんてほとんど鍛えていなかったんですけど、今はバリバリやってます。ただ、それも目的があって。選手たちに憧れられる存在でいたいな、と。自分自身、そんなにカッコいいわけではないですが、シュッとしていれば、生き生きと、楽しそうに仕事をしているように見えるじゃないですか。僕らの時代と違って、今の選手たちはファッションに敏感です。柔道着ひとつとってもとてもいい匂いがするんですよ。
――そうなんですか!
井上 組んでみたらわかりますよ。先輩と後輩のやりとりにしても、「先輩、最近、柔軟剤変えました?」みたいな感じなのです。そんなの、ぜんぜんいいじゃないですか。柔道の本質を踏み外しているわけではないので。デジタル化、ダイバーシティと、社会変革のキーワードが巷に溢れています。そんな中、柔道も、これからはどんどん変わっていかなければなりません。中には「えっ! 柔道が?」と思うこともあるかもしれませんが、娯楽が多様化し、少子化に歯止めがかからない中、柔道が生き残るためには、偏見を持たずに、やれることはやっていかないと。
「無観客開催」は有利に働いたのか
――あと、今回、多くの方が言っていましたが、東京五輪の無観客は、非常に日本チームに有利に働いたのではないか、と。その点については、どう思われますか。
井上 そこは、怖いところでもあります。結果的に、男子柔道で金メダルを5個獲りました、と。無観客だったからね、そうだよね、みたいな雰囲気があります。いや、そうじゃないんですよ、と。スタッフの指示が通りやすかったとか、選手が過剰に興奮し過ぎてメンタルコントロールを失うことがなかったとか、確かにメリットはありました。