秀才軍団×元プロ野球選手の化学変化

　現在の京大には身長194cmで最速152kmを投げる水口創太という大型右腕がおり、京大史上2人目のドラフト指名選手誕生かと注目もされているが、近田は個人能力だけに頼らないチームづくりを目指している。

「監督になって最初の全体ミーティングで話したのは『とりあえず挨拶をしっかりしよう』『練習の無断欠席はやめよう』『忘れ物はしない』の3点でした。それが出来ないのなら試合で使わないよ、とも言いました」

　近田は「そんなこと？と思うでしょう」とほほ笑んだが、瞳の奥は真剣そのものだった。

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「野球が上手くてもそういう選手を使えば、チーム内には必ず不平不満が現れるんです。そうなると良い組織にはならない。また、僕がこれまで育ててもらったチームや指導者の方たちがそのようなことを大切にしていました。中学の三田シニア、高校の報徳学園、そしてソフトバンクでも、当時の鳥越（裕介）二軍監督（現・ロッテ二軍監督）はそうでした。プロの世界でも同じで、僕は身をもって感じてきました。

　もちろんそれが出来たからといって、すぐに勝てるわけではないのは承知です。だけど、勝つチームにふさわしい人間になろう。立ち振る舞いも意識しよう。自分だけが良ければいいのではなく、京都大学という誇れる大学の野球部として自覚を持って行動しよう。それを僕は部員に一番に伝えていきたいと思っています」

　超がつくほどの秀才集団に、その世界のトップの景色を見た男が様々なエキスを加えることでどんな化学変化が生まれるのか。

　近田監督のもとで躍進する京大野球部が、野球界ひいてはスポーツ界全体に新たな指針を示す日が来るかもしれない。