私が日本代表としてプレーできたのも、こうしたいろんな人との出会いがあったから。自分を成長させてくれる出会いは、単に求めているだけでは手にできない。「選手権」という明確な目標があり、そこを目指したからこそ、知らない世界や才能に触れることができた。そしてまたそこで得た刺激を糧に、さらに上を目指す。その最初のステップが高校サッカーであり、選手権だったんです。

『ふり向くな君は美しい』を聴くと、今でも

『ふり向くな君は美しい』を聴くと、今でも当時の記憶が蘇ります。選手権しかない独特の雰囲気や匂い。国立だけじゃなく、1、2回戦でよく使用した大宮サッカー場（現NACK5スタジアム）の景色も思い出します。サッカー専用スタジアムでやれるのは本当に嬉しかったですね。まぁ、芝生は緑じゃなかったですけど（笑）。夢中になれたこと、成長させてくれる人との出会い……それを与えてくれた選手権は、私の中で原点だと思っています。

第100回選手権の舞台になる国立競技場　©Getty Images

　今大会、久しぶりに国立競技場での開催が予定されています。指導者も代替わりし、新しいスタイルもどんどん生まれ、スタジアムも生まれ変わった。彼らの人生に長く刻まれる時間になるでしょう。新しい歴史が始まる大会ですから、またすごいドラマが起こる予感がしますね。大いに期待しながら楽しみたいと思います。

　最後に、少し今大会の展望にも触れておきましょう。やはり2年連続準優勝の青森山田は優勝候補本命の中心に置かないといけません。MF松木玖生（3年）のような、精神的にもタフなエースがいることは優勝するための条件でもある。青森山田を周囲の高校たちがどうやって倒すのか。そこが大きなポイントになることは間違いないでしょう。

第98回大会決勝での松木。当時1年生ながらレギュラーだった　©Takuya Sugiyama

　個人的に期待したいのは西武台です。埼玉県予選の決勝、母校の浦和南が延長戦で敗れたことは残念でしたが、最後まで目が離せない気持ちがこもった素晴らしい試合でした。埼玉県勢は近年なかなか勝ち上がれていないので、地元民としてエールを送りたいです。（構成／谷川良介）