「パチンコやったりタバコ吸ったり、（アスリートとして）もう論外って感じでしたよ。駅伝部というより、同好会に近い雰囲気でした。徳本さんが『なにやっとんじゃーい』ってグラウンドで怒ってて、今とはまるで違いましたね（笑）。

　でも不思議なもので、本気になる人が増えていくと、組織が変わっていくんですよね。いきなり変わったというよりは、ポイントごとにチャンスを掴んできた結果だと思います」

「チームに足りなかったのは『泥臭さ』でした」

　今シーズンのチームにとっては、6月の全日本大学駅伝の関東地区選考会がそのターニングポイントだったと振り返る。選考会前に発表されたタイムは全20校中16位だった。ところがフタを開けてみたら、次点の8位。霧の中にあった箱根出場という目標が、くっきりと見えた瞬間でもあった。

「僕たちは5000m、10000mのタイムは速くない。その代わりに、駅伝を走るためのトレーニングを軸としてきました。軸に対する取り組みや意識の強さが（予選会での）勝因だと思っています。

　僕から客観的に見てこれまでチームに足りなかったのは『泥臭さ』でした。でも、今季の予選会のスタートラインに立ったチームの中で、一番泥臭いのは自分たちのチームだったと思えるくらい、走り込んだ自信はあります」

　スマートな若い世代と触れ合ったとしても、今井のポリシーである「泥臭さ」にブレはない。決して有力選手の集まりではないチームが、泥臭く、熱く、箱根を目指す姿は、箱根駅伝小説「風が強く吹いている」のストーリーにも重なりを覚える。

「風どころか、強風が吹いてますよ」

　今井は、ニカッと笑った。

撮影＝平松市聖

（#3へ続く）

#3に続く

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