「僕はリトル徳本なんですよ」31歳箱根駅伝ランナー今井隆生が過ごした“11歳下同級生&12歳上監督”との駅伝生活

先輩後輩問わず、呼び名は「今井さん」

　1年生とは12歳差。一回りも離れている。

　20歳前後の学生たちにとって、31歳の今井はどちらかと言うと、コーチに近い年齢だ。一学年下の永井竜二（3年）は、教師駆け出し時代の教え子でもある。チームメイトとしては言わずもがな、先生としても弱い姿を見せられない、とのプライドが今井の背中を強く押してきた。

「（周りの部員への意識は）チームメイトと生徒が、フィフティーフィフティーでした。弱音を吐きたくないし、ましてや相談することなんて意地でもしたくなかった。同じ学生であっても、僕は一教師でありたいんですよね」

2年間にわたる駅伝部生活を振り返って「弱音を吐きたくないし、ましてや相談することなんて意地でもしたくなかった」と語る駿河台大の今井隆生

すべての写真を見る（4枚）

　先輩後輩問わず、呼び名は「今井さん」。練習を先頭で引っ張り、私生活でもアドバイスする。そんなチームの兄貴分として慕われてきた。面倒見の良さは、教師の性分かもしれない。一方で、歳の離れたチームメイトと自身を隔てるジェネレーションギャップも強く感じていたという。

「トライアスロン時代から、泥臭く練習しないと結果はついてこない、というのが僕のポリシーでした。遠回りでも、苦しんで苦しんで目標にたどり着けばいいと。でも、若い世代はもっとスマートですね。ゴールまで最短距離を目指すし、常に新しいものを取り入れて、すぐに答えを見つけようとする。山登りに例えれば、僕が杖をついて休み休み登るとしたら、若い世代はロープウェーに乗って一直線、というくらいの違いを感じました」

31歳の今井が感じた「時代の変化」と「危機感」

　練習量が第一。泥臭いトレーニングを積み重ね、「スポ根」世代に揉まれた今井にとって、若い世代の空気感は慣れにくいものがあった。

【次ページ】　「僕達は才能がある選手の集まりではない」