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ストイコビッチの「NATO空爆抗議」を思い出す… “日本でプロ選手”になったミャンマー難民GKがブチ当たる苦悩とは
text by
木村元彦Yukihiko Kimura
photograph byKentaro Takahashi
posted2021/12/19 17:00
YS横浜入団会見の際のピエリアンアウン。フットサルプレーヤーとして、葛藤を抱えながらのプレーが続いている
「自分は、サッカーからフットサルに転向してまだ慣れていない。戸惑いがある」
パフォーマンスが上がらないことを環境のせいにしないのは、プロとしての矜持でもあった。試合に出られないのは、コンディションなのか、慣れていないからなのか?と聞かれると、「慣れていないからだ」とフィジカルが落ちていることは、頑として認めなかった。
「現在のパフォーマンスを見ての判断」
同席した監督の前田佳宏にも質問が飛んだ。前田は「現在のパフォーマンスを見ての判断を下した」ということを率直に語った。
言外になぜ使わないのか? という空気のある中での質疑は、決して愉快なものでない。だが、「チームはファミリーであり、監督と選手の役割の違いはあっても上下の関係は無い」ということを指導のポリシーにしている指揮官は終始柔和な表情で質問に応じ、最後に快活に答えた。
「アウンの公式戦デビューはそう遠くないタイミングで必ずあります。私は彼を信じていますし、期待しています」
会見後、数人の記者仲間と会食に流れた。東京新聞の北川成史、フリーランスの北角裕樹。琉球新報の「ダブル松」ならぬ、ミャンマー報道の「ダブル北」である。誰もが、デビュー戦を取材したかったという気持ちはもちろんあるが、長い目で見て行こうという思いをそれぞれが吐露した。<#2、#3に続く>
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