F1ピットストップBACK NUMBER
<劇的戴冠>「ありがとう」に込められたリスペクト…フェルスタッペンとホンダが築いた栄光に至る信頼関係
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/12/14 17:03
劇的な逆転後、フェルスタッペンは最高の仕事をしたソフトタイヤとマシンを労るような仕草を見せた
「チーム一丸になって、ここまでみんなよくやってきた。今日は勝っても負けても、全力を出し切って笑顔で終わることができるレースをしよう」
ハミルトンとの差が縮まらないまま迎えた残り5周、クラッシュしたマシンを撤去するため、セーフティーカーが出動。マシン撤去に時間がかかり、レースが再開されないと予測したメルセデスは先頭のポジションを守るためにコースにとどまった。一方、チャンピオンシップを獲得するには失うものはないフェルスタッペンは迷わずピットイン。タイヤを交換して2番手のままでコースに復帰した。
残り1周で劇的な逆転
さらにレース再開直前、ハミルトンとフェルスタッペンの間にいた数台の周回遅れのマシンをレースディレクターが先行させたため、状況は一気にフェルスタッペン有利に傾く。
ADVERTISEMENT
残り1周でレースが再開されると、直後にフェルスタッペンがハミルトンをオーバーテイクし、逆転。劇的な幕切れで、フェルスタッペンがドライバーズチャンピオンに輝いた。
直後にメルセデス側がレース再開の運営について抗議したため、アブダビGPのパドックは表彰式後、4時間以上にわたって沈黙が続いた。午後11時3分、レース審議委員会がメルセデスからの抗議を棄却。その瞬間、レッドブル・ホンダのスタッフたちはホームストレートへ歓声をあげながら繰り出し、タイトル獲得を祝う記念撮影を行った。
メルセデスにはレース審議委員会の決定に控訴する権利があるため、フェルスタッペンのドライバーズチャンピオンは、12月13日の時点で依然として流動的だ。しかし、その結果がどうなろうと、フェルスタッペンとホンダが築いた信頼関係と成し遂げた栄光の数々、そして与えてくれた多くの感動は少しも色褪せることはない。
おめでとうマックス。そして、ありがとうホンダ。