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<劇的戴冠>「ありがとう」に込められたリスペクト…フェルスタッペンとホンダが築いた栄光に至る信頼関係
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/12/14 17:03
劇的な逆転後、フェルスタッペンは最高の仕事をしたソフトタイヤとマシンを労るような仕草を見せた
ホンダとレースを戦い始めて約3カ月、19年のオーストリアGPで両者の思いは優勝という形で結実した。表彰台に現れたフェルスタッペンが左胸に刺繍された「H」のロゴマークを指差したのは、ホンダへのリスペクトだった。
それから2年が経ち、フェルスタッペンとホンダの旅は、最終章を迎えた。大一番を前にしても、アブダビGPでフェルスタッペンが落ち着いていたのは、自分ひとりだけで戦っていたからでなく、ホンダとともにレースしていたからだろう。
「今シーズン、僕はホンダと多くの勝利を挙げ、素晴らしい瞬間を積み重ねてきた。だから、僕たちはチーム一丸となってチャンピオンシップを勝ち取りに行く。エキサイティングなレースになるはずだし、シーズンを最高の形で終えたいと思っている。どんな結果が待っていようとレッドブル・ホンダとして僕たちがここまで成し遂げてきたことを誇りに思うし、とても満足していることには変わりない」
ホンダが手にした90回目のポールポジション
12月11日、ホンダにとって最後の予選で、フェルスタッペンはポールポジションを獲得した。1964年に始まり、撤退時期を挟みつつも57年に及んだF1活動で、ホンダが手にしたポールポジションはこれが90回目だった。
ドライバーズ選手権のトップ2人が同点で並んで最後のレースに臨むのは、71年のF1の歴史の中でも今回が2度目。1974年のエマーソン・フィッティパルディとクレイ・レガツォーニ以来となった。
ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンは1コーナーで2番手のハミルトンに先行を許し、直後にオーバーテイクを試みるも成功せず、その後は徐々に引き離される苦しい展開となる。
それでもフェルスタッペンもチームも、そしてホンダも諦めない。このレースがタイトルがかかった一戦だというだけでなく、ホンダにとってのラストレースだということをレッドブル・ホンダのスタッフ全員が共有していたからだった。
レース前、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は山本MDにこう言った。